閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

331 屏風絵葡萄酒

屏風絵や掛軸や襖絵は、かまへずに眺められるところがいい。気らくと云ふと、生真面目な美術愛好家から、白い目で睨まれさうだから、リラックスして眺められると云ひかへておきませうか。 たれの説だつたか、江戸以前の美術は、獨立した藝術ではなく、生活の…

330 伝統蛍烏賊

蛍烏賊について辞書を幾つか調べた上で、ざつと纏めると、大体下記の如くになる。 ◾️ツツイカ目 ホタルイカモドキ科に属するイカの一種。胴長六から七センチメートル。体表に数百の発光器を持つ。食用。 ◾️日本特産。 ◾️分布は本州中部以北の日本近海沿岸。 …

329 遍照饂飩

ちよつとした温泉地、景勝地に行くと、何とか温泉や何々の井戸は、お大師さまが掘りあてたとか、杖をついた場所から水が溢れてきたとか、そんな感じの看板を目にする機会がある。妙に誇らしげなのが微笑ましい。 お大師さまと呼ぶ時、それが空海弘法大師を指…

328 肴になるカメラ

新品中古を問はず、カメラを手に入れると、嬉しくなるのは人情といふものでせう。それがたれでも買へるありふれた機種であつても、嬉しさを減じる理由にはならない。 この数年のわたしは、物慾がすつかり稀薄になつたから、殆どカメラを購はなくなつた。慾し…

327 書く為のカメラ

書く為といふのは文字通りで、たとへばこの手帖に書けるカメラかどうかの意味。 何をまた阿房なことをとあきれられるか。 ライカに決つてゐるだらうと云はれるか。 まあ、どちらでもいいや。 商賣で云ふとライカかニコンになるらしい。歴史が長く、逸話に事…

326 旅行に持つてゆくカメラ

ここでいふ旅行は一泊乃至それ以上の期間を考へてゐる。何とかバスで行く温泉と打ち立て蕎麦を樂しむ日帰りツアーは含まれてゐない。また撮影自体が目的の旅行も考慮してゐない。旨いものを食べに行くとか、佳いお酒を味はふとか、そんな目的の旅行なのでそ…

325 EOS1000QD(キヤノン)

初めて自分のお金で買つたのが、EOS1000であつた。友人が先に手に入れ 「面白いから、お前さんも、どうだ」 と誘つてきたのである。併し何を買つていいか、さつぱり判らないから、その友人にカメラ屋までついてきてもらつた。 目に入つたのが、ミノルタのα‐3…

324 MZ‐5(ペンタックス)

デジタル・カメラの惹句によくある、“タッチ・パネルで直感的な操作が可能”といふのは嘘…嘘が惡ければ誤魔化しである。画面をいちいち叩き、メニュ階層を下がるのが本当に合理的なら、フラグシップ機にダイヤルやレヴァが数多く配置される理由はどこにあるの…

323 R1s(リコー)

リコー・ファンである。理由を話し出すと切りも纏まりもなくなるので、その辺は詳しく触れない(まあさうなのだなと思つてもらへればいい)我が親愛なる讀者諸嬢諸氏の中にもファンはをられるだらうが、きつと殆どはGR(デジタル)のファンではなからうか。 その…

322 AF600(ニコン)

この型番で直ぐにあのカメラねと解るひとは少ないんではないかと思ふ。通称はニコンミニ。コンパクト・カメラである。 前々から思つてゐるのだが、ニコンは中級機普及機の作り方賣り方が、本当に下手糞な会社ですな。何が流行つてゐる、受けてゐるといふとこ…

321 ペンS(オリンパス)

小説家はそのデヴュー作にすべてが隠されてゐるといふ説がある。分析をしたわけではないが、割りと正しいのではないかと思ふ。 カメラに同じ見立てが成り立つかと云へば、それは怪しい。小説が原則として個人の作業なのに対し、カメラ造りは集団の仕事だから…

320 つまみが要る

麦酒を呑むには、つまみが要る。 お酒でも葡萄酒でも泡盛でも焼酎でも事情は同じで、例外にしていいのはヰスキィくらゐとも思ふが、ここは麦酒に限つておく。 蒸し暑いのだから、かまはないでせう。 麦酒は懐の深い飲みものだから、大体の食べものは適ふ。か…

319 正しいおにぎり

コンヴィニエンス・ストアでは種々のおにぎりが賣られてゐて、それを眺めるのは密かな樂しみでもある。尤もわたしが買ふのは、ごくありきたりのおにぎりで、性分と云ふ外にない。ではそのありきたりは何かと訊かれるだらうか。 梅干し。 昆布の佃煮。 おかか…

318 Ig Nobel

平成十七年の栄養學賞は、『三十四年間、自分の食事を写真に撮影し、食べた物が脳の働きや体調に与へる影響を分析したこと』に対して、中松義郎に与へられた。平成十七年から遡つて三十四年前といへば昭和四十六年。そこから三百六十五日、規則正しい一日三…

317 不純酒精交遊

イズムといふ言葉がある。マルクシズムをマルクス主義と訳した時の、主義にあたります。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏なら既にご存知のとほりでせう。ところでこのイズムにはもうひとつの意味合ひがあつてそれは中毒。アルコーリズムならアルコール主義ではなく…

316 気らくな距離

家の近所に中華風の料理のお店があつて、平日のお晝は日替り定食を出す。正確には五種類のおかずを曜日毎に出し、それらが一ヶ月単位で入替る。詰り五種類掛ける十二ヶ月で年間計六十種の定食が供される計算になる。六十種が全部まつたく異なる新しい料理で…

315 アグファとハイライト

トイデジカメといふ分野があつた。あつたと書くのは今もあるのかは知らないからだが、どちらでもデジタルカメラの趨勢に何の影響もない。 アグファといふカメラ、会社があつた。こちらをあつたとするのは正しくなく、名前は今に残つてゐる。カメラからは離れ…

314 娯樂といへども

空腹はきらひだけれど、何を食べるかを考へるのは好きである。矛盾してゐる。どこが矛盾かといふと、何を食べるか考へるのが樂しいのは、お腹が減つてゐるからで、満腹の時に考へるだつて詰らなくはないが、どことなく計劃的な気分になる。お財布にとつて、…

313 裏話

三百二回目から三百十二回目まで、主に食べものについて、短めの話を書いた。本棚に福武文庫版の内田百閒の随筆があるのを取り出して讀んでゐる内に影響されたらしく思はれる。百閒先生の随筆は割りと短くて、妙なところが緻密で、文章の基本と云はれる起承…

312 横濱ビイル

何年か前…その何年か前は中畑清が監督の頃だから、この十年以内のことである…横濱球場で麦酒を呑んだ。いや麦酒はつけたりで、野球見物が主だつたのだが、そつちの話は措く。 横濱球場は麦酒の持ち込みが出來ない。外の球場もさうなのだらうが、明治神宮野球…

311 散らし助六

いつ食べてもかまはないし、食べればうまいのに、食べたいとは思ひにくい双璧は散らし寿司と助六ではないかと思ふ。殆どのひとが、さうではないだらうか。統計を取つたわけではないから、殆どが正確なのかどうかは疑はしいけれど、何となくそんな気がする。…

310 特別急行の卓

年に何べんかは特別急行に乗る。中央線で新宿と甲府または小淵沢間のあずさ號。東海道新幹線で東京新大阪間のこだま號かのぞみ號。外の特別急行は乗らない。厭なのでなく切つ掛けが見つからないのが理由で、切つ掛けが見つかれば乗るのは勿論吝かではない。 …

309 鮭の塩焼き

平成元年の春、庖丁を初めて持つた。時期がはつきりしてゐるのは、千葉県の市川市で独り暮しを始めたからで、自炊をせざるを得なくなつた。何をどうすればいいのかさつぱり解らなくて、野菜炒め計り作つた記憶がある。 續いて魚を焼くことを覚えた。但し捌く…

308 スパゲッティ

考へてみたら長いことスパゲッティを食べてゐない。マカロニも食べてゐないと思つたが、こつちはマカロニ・サラドで食べてゐるから、縁遠いのはスパゲッティといふことになる。家で用意するのに苦心があるわけでない。大鍋にたつぷりの水と塩をひと掴み。こ…

307 カレーシチュー

小學校六年間の樂しみと云へば給食だつた。所謂ご飯給食は知らない。中學校に進學する年度になつて、試験的な導入があつたさうで、悔しかつたのを覚えてゐる。食べられなかつたからさう思ふので、實際に食べてゐたらちがふ感想を持つた可能性はあるが、食べ…

306 惣菜麺麭

惣菜麺麭を偶に食べる。ソーセイジやコロッケやミンチカツ、或はソース焼そば、ナポリタン・スパゲッティ(ジャムやチョコレイト、クリーム、餡の類は菓子麺麭だから別扱ひにしたい)を乗せ、または挟んだ麺麭。取り立てて旨いとも思はないが、何かの弾みで口…

305 素麺

一体この時期は食慾が落ちる。空腹を感じないのではなく、胃袋に収められる量がぐつと減る。同時に収めたくなる食べものの種類が絞られてもくる。ごつてりとした煮込みなんかは見るのも厭になる。匂ひに鼻を擽られると旨さうだなと思はなくもないが、目の前…

304 チキンカツ

チキンカツはあんまり見掛けない。マーケットの惣菜賣場に百九十八円(但し消費税は別)で並んでゐるのを見るのが精々で、もしかすると洋食屋だとか定食屋のメニュにもあるのだらうが、記憶に残つてゐなければ、見掛けないのと同じである。 正直なところ大して…

303 しやぶ餅

友人にKといふ男がゐて、食べものの好ききらひが烈しい。他人さまのことを煩く云へもしないのだが、Kは生魚全般が駄目と称してゐて、そのくせいつだつたか、鮪の油のところを旨さうに食べてゐたから 「話がちがふぢやあないか」 さう指摘したら 「かういふの…

302 カップ焼そば

初めて食べたカップ焼そばは多分日清のU.F.O.で暫く外に同じやうなのがあるのを知らなかつた。袋入りの即席焼そばはその前から知つてゐて、それも矢張り日清だつた。日清は大坂が拠点だか本社だかの筈だから母親が義理立てしてゐたのだらうか。併しそんなこ…