閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1037 気に入りで、呑む

GRⅢを私が常用してゐるのは、我が数少い讀者諸嬢諸氏に、御承知のことと思ふ。云ふまでもなく、小振りでかるく、素早く動いてよく冩る。切り替へなしで、寄つて撮れれば、なほいいと思へて…この場で云ふことではなかつた。 もうひとつ、このカメラは酒席に似…

1036 今度はきつと

不注意でカメラを壊した経験が、一度だけある。タキシに乗つた時、膝に置いてゐて、降りる際に滑り落した。間の惡いことに、落ちたのが水溜りだつた。慌てて拾い上げたけれど、残念な結果になつて仕舞つた。今でも覚えてゐる。それはニコンFEで、ニッコール…

1035 買ひそこねたカメラ

リコーのGRデジタルは初代からⅣまであつた。 この四世代は受光素子の大きさで、初代とⅡ、Ⅲ及びⅣに分割出來る。 これまで何度も触れたとほり、私の手元にあるのはGRデジタルⅡで、最初はⅢが出る直前に入手した。Ⅲを見た時、Ⅱに較べると、アクセサリ・シューが…

1034 買ひそびれたカメラ

リコーにGXRといふカメラがあつた。 全体を制禦する本体、受光素子とレンズを組合せたユニットで構成されてゐた。 単焦点が二種。 標準ズームが二種。 高倍率ズームが一種。 レンズと受光素子を一体にすることで、それぞれに最適なチューニングが出來るとか…

1033 小皿の幸福

風がぬるむ候、野菜が美味しくなつてくる。 菜の花を目にすると、先駆け、と呼びたくなる。鮮やかな色みが何とも嬉しい。辛子が効いてゐるのが叉、肴には絶好で、飲み助の幸福はここにあるのだと思はされる。 風ぬるみなば、 春とほからじ。

1032 上野にて

過日、上野の博物館で開催されてゐた和食の展示會に、呑み仲間の女性を誘つて足を運んだ。和食を科學の視点から見てゆきませう、といふ企劃意図。 上野恩賜公園の西郷隆盛像の処で待合せた。旧國鐵の上野驛で降り、ここに來るのは初めてと気が附いた。空は快…

1031 曇

雪の屋根。 重機、電線。 傍らに酒。

1030 敷居の向ふ

きらひではないのに、積極的に食べもしない料理は何ですと聞かれたら、天麩羅と応じる。揚ゲタ食ツタでないと、うまくない。さういふ天麩羅を食べたければ、天麩羅屋にでも足を運ばざるを得ず…屋台賣りの廉な軽食を、御座敷料理まで昇華さしたのは、云ふまで…

1029 そんなら

田辺聖子さんのエセーで讀んだ川柳…だつたと思ふ。 だんだんと そんならの出る おもしろさ 記憶だからどこか、間違つてゐるかも知れないが、そこは気にせずに續けますよ。 川柳の讀み解きほど、詰らないこともない。だけれどこれだけでは、何を詠んでゐて、…

1028 曖昧映画館~マジンガーZ Infinity

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 『マジンガーZ』は子供の頃、夢中だつた。ひとが乗つて操縦するのだから、玩具を持つてそれを、ぼくが操つてゐるんだと思ひこめ、それは仮面ライダーやウルトラマンの変身と、一味ちがふ感覚だつた。 そのマジンガ…

1027 唐揚げを、喰はう

呑んでゐる夜、唐揚げを喰はうと思ふことがある。それなりに馴染んだ呑み屋の品書きには、鶏の唐揚げと蛸の唐揚げがあつて、さうですね、七対三くらゐの割りで、蛸を撰ぶことが多い。好みは勿論、胃袋の都合でもある。 尤も仄暖かな夕刻に、空腹を感じる日が…

1026 ウルトラマンブレーザー~感想余話

かれは、何ものだつたんだらう。 全廿五話に及んだ『ウルトラマンブレーザー』を観て、結局さつぱり、解らなかつた。 円谷ステーションから、設定…といふより、紹介の箇所を丸ごとコピーすると https://m-78.jp/character/ultraman_blazar/ 主人公・ヒルマ …

1025 感想文~ウルトラマンブレーザーを観て(後)

残る三話は、散りばめられた伏線を織り上げ、終着点へと辿り着かせる流れなのだが、果して大丈夫だらうか。 不安に駈られる第廿三話、いきなりゲント隊長のからだの調子がをかしく、医務室ではお医者さまに、骨量の減少と筋萎縮が甚だしいぞ、と咜られてゐる…

1024 感想文~ウルトラマンブレーザーを観て(前)

毎週末の樂み、『ウルトラマンブレーザー』が先日、最終回を迎へた。初回から第十二話までは [977 感想文~ウルトラマンブレーザーの前半を観て] に記してある。この稿では、第十三話から第廿五話(最終回)を主に(前半に伏線の描冩が幾つか、含まれてゐるから…

1023 ロジカル湯麺

寒いのはきらひである。 暑いのはにがてである。 どつちかを撰べと云ふなら、寒い方がいい。厚着して、熱い珈琲でも緑茶でも、啜つたら、何とかなるが、暑いと麦酒をあふるしかない。麦酒は寒くてもうまい。となれば、寒さに軍配を上げておかうとなる。どう…

1022 GRⅢ、ストラップに就てしつこく

自分でもしつこいと思ふが、またGRⅢで使ふストラップの話をする。附けてあるのは手首を通す式なのは以前に触れたとほり。今のストラップに格段の不満があるわけではない。ところで我がGRⅢでは、ライカM5のやうな縦吊りでも、ストラップが取りつけられる。こ…

1021 虎と鮪

過日、久しぶりに某所の立呑屋へ、足を運んだ。私にしては少し遅れた時間帯で、自分の場所はうまく取れた。紅茶ハイ(甲類の無糖紅茶割り)を呑み、お店のママさんと、顔を知る常聯さんに、どうも御無沙汰してゐますと挨拶をした。隣のお嬢さんが、二種の[十四…

1020 物慾の埋み火

先日、某カメラ屋で、(所謂)標準ズームレンズが附いた、EOS R50に触れた。手が余るくらゐに小さく、拍子抜けするほどかるい。驚いた。 EOSはフヰルムの時代に馴染んだ。ニコンのF系やミノルタのα系と較べて軽やかで、操作のインタフェイスに統一感があつたの…

1019 GRⅢ、ストラップに就て

GRⅢにはオプテック社のネオプレン製で、手首を通す式のストラップを附けてゐた。惡くはなかつたけれど、気に入るまでは到らなくもあつた。分厚くて手首に纏ひつく感じが、好きになれなかつたんである。オウナーのWebログを眺め、幾つか有名なのがあるのは判…

1018 好きな唄の話~ラデツキー行進曲

正月元日にウィーンの樂友堂で開かれる、ウィーン・フィルハーモニーの公演で、一ばん最後に演奏されるのが恒例となつてゐる。かろやかで花やかで賑々しく、詰りシュトラウス一家のポルカやワルツ、マーチで彩られた、年の始めの演奏會の締めくくりによく似…

1017 丸太花道、東へ

睦月の五日、膝腰の具合が宜しくないと父親が云ひ出し、病院へ検査に行つた。昨年の夏、かるい脳梗塞を發してもゐた事情がある。何といふこともなからう、と思ひたくはあるにしても、検査の結果で、何といふこともないと確められるに越したことはない。つい…

1016 年末と年始の予定の内と外(後)

令和六年の三ヶ日。 正月元日。 予定通りの朝は薄く晴れ、御佛壇に挨拶をし、二親と共にお目出度うを云ふ。御屠蘇の代りは藝州賀茂鶴の純米。口当りがかろくて中々宜しい。御節…お重につめるやうな…は要らないことになつてゐて、田作りや蒲鉾、八幡巻きを摘…

1015 年末と年始の予定の内と外(前)

お午に少し早い時刻に家を出た。 旧いふるい友人エヌと游ぶのが目的である。 "旧いふるい"は譬喩ではない。 四十年余のつきあひなのだから、さう称しても咜られはしないでせう。 顔を見るのは二年振りになる。この二年は、廿台卅台の二年と、余命の一点で重…

1014 長閑な春

御屠蘇に藝州賀茂鶴。 外は晴れ。 御雑煮にお餅を三つ。 春は長閑。 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏に、謹んで新年の御挨拶を申し上げる。

1013 予定の外

パナソニックにGH2といふデジタルカメラがあつた。 發賣は平成廿二年…十三年前である。その時に父親が、十倍のズームレンズと一緒に贖つた。懇意の電器屋がパナソニックを扱つてゐたのが理由のひとつ。この手の玩具を買ふにあたつて、最新型を慾しがる指向が…

1012 予定

大坂にゐる。 新大阪驛で東海道新幹線を降り、大阪メトロ御堂筋線の西中島南方驛、阪急京都線の南方驛を経て、地元の最寄驛に着到し、そこからは徒歩。梅田まで行かなかつたのは、路に迷ひさうな気がしたからである。あすこはもう、知らない街になつて仕舞つ…

1011 丸太花道、西へ

西上碌の外題は毎回、同じである。 『ウルトラセブン』の「U警備隊、西へ」…神戸の港を舞台に、キングジョーこと、ペダン星人のロボットが登場する前後篇…を盗んだ。セブンには、秀逸な題が少からずある。第一話の「姿なき挑戦者」から、既に恰好いいもの。 セブ…

1010 "辛口!!"

拉麺に就ては詳しくない。だから拉麺と湯麺が、どこで区別されるのか、よくわからない。大体が拉麺じたい、この國では、無秩序な展がりを見せてゐる。 ややこしいことを云はなければ併し、寒い日の晝にやつつける拉麺乃至湯麺は、決して惡くないもので、お店…

1009 小天狗の夜

白菜。 胡瓜。 たくわん。 蕪。 高菜。 ピックルスにザワークラウト。 その他、辣韮や梅干しも含めていいか知ら、兎にも角にも諸々のお漬物がある中で、私が一等好きなのは、野沢菜漬けなのである。ごはんとお味噌汁、一切れの焼き鮭(鯖や鯵や鯵、或は秋刀魚…

1008 天狗舞ふ夜

玉子を使つた料理が何種類あるのか、知らないけれど、オムレツやスクランブルド・エグス、目玉焼き(ハムエッグやベーコンエッグも含めて)と並んで、玉子焼きがトップランカーなのは、間違ひないと思はれる。 某日の夕方、馴染んだ呑み屋の品書きに、玉子焼き…