閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

045 時々だもの

 時々思ひ出して、慾しくなつて、直きに忘れるカメラといふのが何台かある。直きに忘れるのだから必要なのでなく(もしさうだつたら忘れられないし、買ひもするでせう)、単に物慾の対象に過ぎない。ただかういふのはお財布の中身とその場の品揃への具合でどうなるか判らず、幸運かどうかは別として、さういふ(とここでは曖昧な云ひ方にしておかう)事態の為にメモを残すことにした。


⚫️オリンパス PEN S

 2回、買つた記憶がある。目測と勘の露光でもある程度は寫眞を撮れると教へてくれたカメラ。ハーフサイズなので数を持て余したなあ。


⚫️オリンパス PEN F

 これも買つた。重くてうるさくて、その癖使ひ勝手はよかつた。初代機の正面に刻まれた花文字の“F”が美しかつた。


⚫️キヤノン EOS RT

 デッドストックを買つた。今の目で云ふと重いのだが、非常に使ひ易いカメラだつた。50ミリ1本で持ち歩きたい。


⚫️コシナ ベッサR

 50ミリ・エルマーで使つた記憶がある。取り立てて賞讃出來るカメラではなかつたが、その気樂さがまた好もしくもあつた。


⚫️コニカ ヘキサー

 使ひにくいし、明るいレンズなのに1/250秒までしかシャッター速がない。併し寫りは非常によいといふ、まつたく困つた1台。


⚫️ソニー サイバーショットU20

 ひと口羊羹のやうな姿だつた。確か100万画素程度だつたから、今では使ひものにならないだらうが、このスタイリングは通用すると思ふ。


⚫️ニコン New FM2

⚫️ニコン FM10

 ニッコールを使ひ尽くすなら前者。Fマウントの他社製レンズを遊び尽くすなら後者。


⚫️ニコン EM

 ニコンの隠れた傑作。小柄で簡潔。カメラはかうでなくちやあと思ふのだが、何しろ調子のいい個体が絶無だからなあ。


⚫️ニコン 28Ti

 コンパクトカメラ造りが下手なニコンの、おそらくは唯一の成功。クールピクスは止めて、これをデジタル化すればいいのに。


⚫️ペンタックス LX

⚫️ペンタックス MX

 KマウントとM42マウントを使ふならどちらかでせう。尤もMXで調子がいい個体を目にした記憶がないのだが。


⚫️ライカ IIIc

⚫️ライカ IIIf

 ライカのスタイリングはこの辺りが頂点で、後は下り續けてゐる。ただフヰルム装填のやりにくさときたら致命的。


⚫️ライカ M4-2

⚫️ライカ CL

 所謂“實用的なライカ”ならどちらかでせう。非ライツのレンズを撰んでも、これらならまあいいかと思へるこの不思議。


⚫️リコー GRデジタルII

 自分で云ふのも何だが、これは相応に使ひ込んだ。手元にはアクセサリが幾つかあつて、改めて買つたとしても、實用になりさうな気がする。


 かう書き出してソニーとリコー以外が悉く銀塩式カメラなのは、ちよつと驚いた。まあ考へてみたら、デジタルカメラは旧式と使へないがほぼ同じだから、当然と云へばさうかも知れない。それはそれとして、上に挙げた機種でどれがうつかりしさうかと自分でも気になるのだが、リコーを除くと(といふのは好きなメーカーだからで、さう云へばGX200やGXRも慾しくなる瞬間がある)…いやこれ以上はやめておきませう。かういふ眞似をすると大体の場合、自滅することになつて仕舞ふ。