閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

267 バランス

 パナソニックのGF3を使つてゐることは以前に触れた。それは相変らない。基本的には画像のとほり、オリンパスのボディキャップ・レンズ2枚の為であつて、どうもどこかが間違つてゐる気がしなくもない。そこで過日、手元にあるシグマの30ミリ(煩いひと向けに云ふとF2.8の初期型)をつけて持ち出してみた。いつもは同じパナソニックのGF1で使つてゐて、やや狭い画角がわたしには丁度よい。現代のレンズなのだから寫りも十分である。

 さうするとひどく使ひにくかつたから驚いた。

 先づボディキャップ・レンズでの操作に馴染んだことが考へられる。カヴァを開け、本体の電源を入れれば、その瞬間から撮れる。シグマの場合はレンズキャップを外し、本体の電源を入れ、レンズの駆動を待ち、焦点が合つてから撮るので、数秒かそれ以上の時間が掛かる。GF1との組合せは“さういふもの”といふ前提があるのだが、GF3にはそれが無い。それは言ひ掛りだなあと思はれるとして、實際さう感じたのだもの。

 それだつたら何度か使へば、きつと馴染めるにちがひないさ。と云ふのは思慮の浅い態度であつて、何故かと訊かれるでせう。勿体振る理由があるのでなく、ごく簡単に大きさと重さのバランスが惡い…正確には崩れてゐるんですね。何度も使ひたいとは思ひにくい。小ささと軽さがGF3の利点なのは云ふまでもないが、組合せるレンズによつては、その利点があつさり崩されて仕舞ふ。たださほど大きくも重くもないシグマの30ミリで、その利点が崩されるとは思はなかつたけれども。

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 だからと云つてそれが、GF3への致命的な不満には繋がるわけではない。入手した目的がボディキャップ・レンズを使ふ為だからで、変則でも変態でも、そこは好きに呼んでもらつていい。尤もここで、普段持ち歩くカメラは、小さくて軽いことが何より正しいとしても、レンズも含めた幾許かのバランスが保たれてゐないと、使はうと思ひにくくなると、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には申し上げておきませう。現にその日は、早々と撮るのを諦めて、呑み屋に入つて仕舞つた。