閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

277 ハラミとカシラとネギマ

 何しろわたしは老人である。他人さまに云はれると腹は立つが、老人であるのは事實であつて、我が若い讀者諸嬢諸氏もいづれ老人になるのだと思ふと、ざまあみろと厭みな笑みが浮んでくる。

 老人であると自覚したのは、先づ食べものの嗜好の変化で、何度か触れた記憶があるから、ここでは繰り返さない。もうひとつはこの稿で取上げる話題の狭さで、どう狭いかは(数少ない)讀者諸嬢諸氏ならきつと、ああ成る程と納得してもらへるだらう。

 話題が狭い理由は幾つか考へられる。順に挙げてもいいのだが、さうすると我が浅學菲才を詳らかにすることになる。浅學菲才は自明だからかまはないとしても、懇切丁寧に説明すると、この手帖を續ける気力が失せさうになる。序でに耻づかしくもあるから、止めておきます。併しひとつくらゐは出さないとこの稿が續かない。そこで安定志向を挙げたいと思ふ。

 大成功は見込めなくても、派手に失敗る心配もせずに済む。と云ふと安易安直の謗りを受けさうだが、さういふ話題を(主に)撰べば、偶さか、捻つたことを書いても…かういふ場合は大体うまくゆかないと相場が決つてゐる…、感じる負担は少なくて済む。ほら、ハラミとカシラとネギマを註文しておけば、取敢ずは安心出來て、変り種のひとつも試してみるかと思へるでせう。

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