2026-01-01から1ヶ月間の記事一覧
もう何年も、甲府に足を運んでゐない。 詰り甲府の鶏もつ煮を、食べてゐない。 もつ煮と云つても、我われがそこらの呑み屋で目にするやうな、臓物と根菜と厚揚げと豆腐とうで玉子を、味噌や醤油で煮込んだ小鉢ではない。鶏の臓物を、甘辛く煮詰めたのを、甲…
デミグラスソースと何がちがふのかと思つたら、こつちはトマトのソースが基なのらしい。もつと云ふなら、ボロニェーゼ…ボローニヤ風と呼ぶのが、正しくもあるらしい。ミートソースのことである。 ボロニェーゼといふ言葉を知つたのは、たれだつたかのエセー…
初めてひとり暮しをしたのは、平成元年の春だつた。仕事の都合で千葉県の市川に住んだ。尊敬する永井荷風が亡くなつた町と知つたのは、何年も後のことである。 その市川で何がこまつたかと云へば、食事の仕度で、何を贖ひ準備するか、さつぱり判らなかつた。…
わざわざ“貪りなほす”としたのは、[1364 貪り損ねた鶏の唐揚げ]に背景がある。どうもあの晩、旨くはあつても、“貪れ”なかつた事實が、埋み火のやうに底に溜つてゐたらしい。我ながら変なところで、しつつこいのだな。 それで別の日、ある休日の夕刻、ちよつ…
熱いつゆで啜るうでた素麺を私は、にうめん…“にゅうめん”でなければ、“煮麺”でもなく…と思つてゐる。このつゆは、大坂風の饂飩で用ゐるくらゐの、あはいのが好もしい。まあ私は極端な無精ものだから、麺つゆの濃さを、調へるに留めてゐるけれども。 つゆでな…
ある晩、不意に鶏の唐揚げを貪りたくなつた。空腹を感じた所為より、兎も角も肉を喰みたくなつたと云ふ方が實態…気分に即してゐたと思ふ。かういふ食慾は、我ながら、珍しい。尤も貪ると云つたつて、自分で揚げる技倆は持合せてゐない。だから、近所の顔を憶…
玄冬の季節になると、お酒の新しい樽が開く。その酒醸りの工程には、“搾り”があつて、搾られた後に残るのが酒粕。更にその酒粕を使つた汁椀が粕汁。旨いものだが、うまいと解つてきたのは、精々十年かそこら前だから、余程にぶい舌である。 これには同居して…
以前にも何度か書いた気がしなくもないけれど、叉この話をしたくなつた。なので気にせず、朝めしに就て書くことにする。職業として文章を扱ふんぢやあなくて、本当によかつた。 普段は食べない。 粉末珈琲とトーストを朝めしと呼べれば、話もちがはうが、幾…
東都へと、下らねばならない。 下るべき理由は、無いのだが。 下らざるを得ない理由はある。 下らざるを得ないならそれは、理由ではなく事情であつて、かう書くと腹立たしくなつてきた。何に腹立たしいかと云へば、その事情が相手であつて、併しその事情は私…
令和七年末に、旧いふるい友人のエヌと、無目的な…正確には無目的が目的の散歩をしたのは、既に触れた。エヌはまつたく合理的な男で、たとへばカメラ撰びにもそれが顕れてゐる。その年末、そのエヌは、パナソニックのコンパクト・デジタルカメラを持つてゐた…
起承転結の無い、詰り点景。 令和八年正月元日。 午前八時頃、佛さまに挨拶をしてから、家族で盃を汲んだ。新潟の朝日山。お酒を呑むのは、まつたく久し振りで、旨いものだと思つた。酒精を断つた父親曰く、温かな塊が、腹の底に落ちるやうな感覚らしい。 八…
起承転結の無い、詰り点景。 令和七年師走廿四日。 帰宅した後、頭のしんが、ぼうとなるのを感じ、速やかに寝に就いた。 翌廿五日から廿七日にかけ、卅七度前後の發熱が續いた。洟が甚だしく、更に便通が止まる。序でに偏頭痛まで起き、まつたくうんざりさせ…
晴れ。 御佛壇に挨拶をしてから、家族で御芽出度うを云つた。 棒鱈、蒲鉾、セレベス芋。 お餅は三ツ葉の御吸もの、佛さまからの御下がりも入れて三つ。 親愛なる讀者諸嬢諸氏に、くちくなつたお腹をさすりながら、新年の挨拶を申しあげる。 令和八年も、旧年…