閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

671 曖昧映画館~陰陽師

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 この映画の舞台は、怪異が人びとの隣にあつた時代。 平安の頃、惡霊や鬼は、疫病や天災と同じく現實的な問題であつた。佛教がもてはやされたのは、悟りなどの観念ではなく、土着の(宗教的な)技術では効果が薄まつ…

670 漫画の切れ端~スケバン刑事

記憶に残る旧い漫画の話。 十台終りの数年、少女漫画に熱中した時期があつた。川原由美子や山口美由紀、坂田靖子、柴田昌弘。中でも和田慎二は別格で、『スケバン刑事』をかれの代表作のひとつに挙げても異論は出まい。 前提は滅茶苦茶である。 主人公の麻宮…

669 好きな唄の話~冬の二人

男と女がゐる。 終りを迎へるだらうふたり。 はつきりしてゐるのは、男…この唄の視点でもある…が女を眞冬の海に誘つたこと。 女が海辺で、"このままぢやあ、ふたり、だめになる"とだけ、呟いたこと。 風が吹く、たれもゐない冬の海で。 ただそれだけを小田和…

668 葱と天かす生卵

この一文をものしてゐる現在、外でめしを喰ふのは憚られる。流石に石を投げられる心配は無いけれど、何とはなしに遠慮しなくちやあならない気分や雰囲気がある。ひとりでふらつと、麦酒ともつ煮と串焼きで半時間呑むくらゐなら平気だらうと理窟は浮びはして…

667 画像が無いマカロニ・サラド

常用のスマートフォンではカメラの機能を使つて、食べたもの飲んだものを冩す習慣があるのは、以前から何度か触れてゐる。お行儀が惡いのは知つてゐるのだが、習慣になつてしまつたし、記憶の代用でもある。なので今から止めるのは中々六づかしい。我が親愛…

666 海内無双に義理を立て

大根おろしがうまいと自覚した切つ掛けは、尊敬する丸谷才一の随筆で何度か、その旨さを讚へてゐたからで、天麩羅屋は大根おろしを存分に食べられて嬉しいとか、湯上げした鰰を、大量の大根おろしと醤油で食べる幸せだとかを讀んだからにちがひない。鰰はハ…

665 曖昧映画館~トゥルーライズ

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 アメリカは時々、莫迦ばかしいくらゐの大金を掛け、信じ難い手間暇を掛けて、とんちきな映画を撮る。ジェームズ・キャメロンがアーノルド・シュワルツェネッガーと組んだこの映画を、その一本…寧ろ代表格に挙げて…

664 漫画の切れ端~クレイジーピエロ

記憶に残る旧い漫画の話。 戰争は終つた、らしい。 どちらが勝つたのかは、判らないけれど。 伝説がある。 道化師の姿で、長剣をふるふ、銃を持つ兵隊より速く強いたれか。 或はなにか。 それがピエロ。 高橋葉介が最初に考へたのは、多分それだけで、その伝…

663 好きな唄の話~番外篇

この稿では一回につき一曲、出來るだけ別のひとの別の唄を取り上げるのを原則にしてゐる。なので全体で完成してゐるライヴ・アルバム…たとへばディープ・パープルの『LIVE IN JAPAN』や佐野元春の『HEARTLAND』、甲斐バンドの『PARTY』…は中々あげにくい。こ…

662 途中経過~ワクチン記

八月念四日(火) 晝に買置きの飲むゼリーを試す。 まづくないのはいいとして、"スポーツ・ドリンク味"つて何だらうと思ふ。 午后に入つて左腕(ワクチンを射つた方)を持上げると、やや重く感じられる。 検温三度、いづれも平熱。 八月念五日(水) 朝検温、微熱(…

661 雲

スマートフォンのカメラ機能は撮つた後、色々と弄れるのが便利でいい。生眞面目な愛好家に云はせたら、きつと邪道の樂みなのだらうが、それはそつちの都合である。わたしとは関係が無い。 勿論カメラに較べて機能が及ばない部分は少くない、といふより、(生)…

660 懐かしの酒席

厚揚げはたいへん便利だと思ふ。焚き合せていいし、炒めものに入れるのも旨い。厚揚げ自体がうまいのは勿論、出汁やら調味料、あはせる様々な食べものの味まで巧みに受けるからだと思へる。 鶏肉と青菜と厚揚げを薄味でさつと焚いたのなんて、嬉しいですな。…

659 接種初回~ワクチン記

八月念一日(土) 副反応がどうなるか解らないし、何が必要になるかも判然としないまま、スポーツ・ドリンクと飲むゼリーを買ふ。 即席のソップは買置きあり。 軟かくて甘い麺麭、おにぎり、レトルトのお粥やカップ麺の類もあつた方がよささうに思つたが、そつ…

658 お好み焼タイム・マシン

お好み焼の話を書かうと思つた。かういふ場合、わたしは先づ、現代のお好み焼のご先祖さまはいつ頃、生れたのかをざつと調べることにしてゐて、どうやら戰前の一錢洋食と呼ばれた駄菓子がそれらしい。小麦粉を水で練つて、薄く延ばし焼き、ウスター・ソース…

657 予約まで~ワクチン記

六月十日(木) 区報にて接種予定に就て通知あり(ファイザー) 六月十二日 両親、一度目の接種との報せ(モデルナ) 六月廿日(土) 接種券を郵送で受け取る。 但しこの時点で予約開始日は未定。 七月廿日(火) 区内の接種受付開始、直ちに埋る。 七月廿六日(月) 接…

656 曖昧映画館~ダイ・ハード

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 クリスマスの夜、カリフォルニア。 完成が間近いナカトミ・ビルディングをひとりの男が訪れる。ジョン・マクレーンといふニュー・ヨークの警官。高所恐怖症のかれが、大嫌ひな飛行機に乗つてまでやつてきたのは、…

655 好きな唄の話~ワダツミの木

初めて耳にしたのはいつだつたか、兎に角驚いたのは忘れ難い。今になつてその驚きの理由を詳らかにするのは六づかしい。こんな唄もありなのか、と思つたのは間違ひない。 曲調も歌詞も、所謂ポップス、或はバラッドとは呼びにくい。民謡や演歌の類でもなく……

654 漫画の切れ端~"ドカベン"のシリーズ

記憶に残る旧い漫画の話。 大勢ゐる世の中の漫画家でふたり、時系列も出版社も無視して、何をやつてもかまはないと思へるひとがゐる。ひとりは松本零士。もうひとりが水島新司で、どうやら水島の漫画は、"ドカベン"にほぼ、集約されるらしい。多少曖昧な云ひ…

653 伝統にも義理を立てて

この稿を書き出した今、陰暦では既に立秋から半月くらゐ過ぎてゐるから、お暑う御坐いますなと云つていいのかどうか、残暑お見舞ひとでも云ふのか知ら。尤も本來ならこの時期は、頬を撫でた風が涼やかだねえとか、池に浮んだ月の蔭が秋のやうだつたよとか、…

652 偶然

先に色々口八釜しさうなひとの為に書いておきます。 平成廿七年の七月十九日に撮りました。どこで撮つたかは云ひません。使つたのはパナソニックのGF1とシグマの30ミリ/F2.8の組合せ。ホワイト・バランスと露光はカメラに任せました。確めると、どうやらこの…

651 第十四師団が焼いた味

本格的な中國料理好きに云はせたら、餃子はたつぷりした皮に、具を詰め込んだのを、ソップ…タンで食べるのが正しいさうだ。我われが云ふ主食…ごはんに当るからね。かういふひとに、おれは焼き餃子が好きなんだと云つたらきつと、えらい目にあふ。あれはタン…

650 曖昧映画館~ロボコップ

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 ロボットの警察官を作らう。 新鮮なひとの死体を部品にして。 といふ頭のねぢが何本か抜け落ちてゐないと出ないだらう發想で撮られた莫迦映画。わたしが云ふ莫迦映画だもの、褒め言葉なのは念を押すまでもない。 …

649 好きな唄の話~Stay with Me

音樂と文學の分類ほど、あてにならないものはないが、シティ・ポップスと呼ばれるジャンルがあるらしい。もしくはあつたらしい。わたしはそれをこの唄で知つた。發賣は昭和五十四年だからほぼ四十年前、わたしは中學生になるかなつたか、それくらゐの頃にな…

648 漫画の切れ端~バオー 来訪者

記憶に残る旧い漫画の話。 荒木飛呂彦の名前を知つたのは、『魔少年ビーティ』でなければ『ゴージャス・アイリン』、或はこの漫画である。近い時期に別の作者の『コマンダーゼロ』や『機械戦士ギルファー』といつた打ち切り漫画があつて、いづれもわたしはフ…

647 文明開化の味がする

始、 原形は西洋の料理にある。 日本の調理法による(時に大胆な)変更が施されてゐる。 ごはんとお味噌汁とお漬ものと一緒に食べる。 以上を満たす食べものを、この稿では(便宜的に)洋食と呼びたい。ごく簡単に、日本化した西洋料理と云へば済みさうな気もす…

646 曖昧映画館~クラッシャージョウ

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 宇宙冒険大活劇漫画映画。と云へば、この映画については八割方、伝はるのではないかと思ふ。 凄腕の"仕事屋"クラッシャー。 謎めいた依頼と美女。 それから惡辣な陰謀。 後はもう、判るでせう。 豪快なカー・チェ…

645 好きな唄の話~Stay with Me

昭和五十九年…西暦で千九百八十四年に米國ロスアンゼルスで開催された五輪に出場した、体操のメアリー・ルー・レットンを観たわたしは、初めてアメリカ女性を可愛らしいと思つた。 二年後、エイス・ワンダーでデヴューしたパッツィ・ケンジットは、初めて可…

644 漫画の切れ端~手天童子

記憶に残る旧い漫画の話。 永井豪といふひとは、天才であつた。かう過去形で書くと怒られさうでもあるが、天才になる困難より、天才であり續ける苦難の方が遥かに巨きい。 ある夫婦の元に、鬼が赤ん坊を預ける。 赤ん坊は"天の手から与へられた子供"の意味で…

643 大きにある

始、 落ち着いて考へると、とんかつをあてにして呑んだ記憶が無い。別に厭ふわけでもないのに。鯵フライやミンチカツで呑んだことはあるのに。とんかつと聞いて聯想するのは、ねり辛子と濃いソース、それから千切りのキヤベツとお味噌汁とたくわんに白いごは…

642 無念の茄子

茄子を食べるようになつたのはここ数年である。要するに食べず嫌ひだつた。今もお漬ものは獨特の歯触りが駄目で、炒めたり焼いたりしたのでないと、旨いとは思へない。 最初に旨いと感じたのは、今はもうなくなつた定食屋で食べた"茄子の肉味噌炒め定食"だつ…