閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

063 例外色

 [060 不精者の正方形]で、この手帖の画像は

 

①“本の話”ではカラー。

②それ以外はモノクローム

が原則。

 

と書いた。理由までは繰返さない。何しろ不精者ですからね。

 

 ここで大事なのは“原則”のひと言であつて、原則だから例外も生じる。それが今回。

 何故例外になつたかと云へば、どう見てもその方がよささうに思へたから、といふ単純きはまりない理由。

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  中野で最近知つた、台北料理の呑み屋がある。

 女将さんがひとりで切り盛りする、カウンタだけのごく小さなお店。

 訪ねた切つ掛けは覚えてゐない。以前から暖簾が出てゐたのは知つてゐて、気にはなつてゐた。少しお酒が入つて、度胸がついたのだと思ふ。

 

 ある晩にそこで註文したのが、トマトと玉子の炒めもの…詰り画像のそれ。女将さんの火の使ひ方は穏やかで、きつと台北流儀なのだらうな。訊いてみたら

「家庭料理のやうなものですからね」

と笑つて受け流された。大きな火を使はなくたつて、平気なんですといふことか。併し家庭料理でこんなに鮮やかな色合ひを出せるものか知ら。

 

 食べてみたら塩胡椒でざつと炒めただけと思へるのに、實に旨かつたから驚いた。我が台北に敬意を表して、紹興酒を頼んだのは寧ろ当然の態度だつたらう。かういふうまいものは、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏に見せびらかさずしてどうなるといふもので、原則なんか知つた話ではなくなる。