閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

190 贅沢でも我が儘でも

 シャープのSHV33を常用してゐる。發賣は2016年初頭だからほぼ3年前。スマートフォンの世界で見ると、随分と古い機種といふことになる。尤も古いからといつて不自由がわけではなく、これにはふたつの見方がある。この機種が發賣以來3年を経て、常用に足る性能を持つてゐるといふこと。もうひとつはわたしが3年前の機種でも不便がない程度の使ひ方に留まつてゐるといふこと。どう考へたつて後者である。何しろ使ふのはウェブを眺めるのとメール、画像の撮影、サイマルラヂオの聴取、稀に通話と電子マネー程度だから、先代のこれも3年余り使つたHTC機だつて、大して不自由は感じないだらうと思はれる。

 さうなると機種の変更を行ふ積極的な理由は何かといふ問題…疑問が浮んできて、シャープにしたのはHTC機の電池が保たなくなり、挙動がをかしくなつた(勝手な再起動の頻發)からなのを思ひ出した。裏を返すと、さういつた事象が起きず、電池の交換も出來てゐたら、HTC機を今も現役で使つてゐる可能性は相応にあつた。馴れと厭きを別にすると、機械として使ひものにならない…少なくとも常用するのに信を置けないといふ状況が、機種変更に到つた事情と云へて、これはどうもオーソドックスとは呼びにくい。そんな態度のひと計りだと、キャリアは困るだらうと云はれても、それはこちらの知つた話ではない。手に馴染ませて使ふ機械を2年や3年程度で交換させて成り立つ商ひなら、それはそのモデルが最初から間違いひだつたといふことでせう。

 併しそれはガラケーの頃からさうだつたと指摘されれば、その点については同意する。だからと云つて、それがモデルの正しさを證明する論拠にはならない。端末の単価が莫迦げた値段になつたから、隠れてゐた、或は気にならなかつたことが剥き出しになつただけの話である。更に自分の使ひ方から云へば、毎月のランニング・コストだつて莫迦にはならない。かう云ふとキャリアのひとは、アプリが色々あります、樂しいゲームだつて用意してますし、兎に角使へば便利なんですと腰を低くするかも知れないが、いやスマートフォンをアプリだの樂しいゲームだのの為に使ふのではありません。さういふのは取り払つていいから、廉に使へませんかねと応じたら、答に窮するのではなからうか。ヴェテランに云はせたら格安SIMを撰べば済むよとなるのだらう。併しわたしは素人である。大急ぎで見栄を張ると使ふ自信くらゐ(多少は)ある。とは云へ限られた用途でしか使はないのに、自己責任的な代物には手を出したくない。

 ここまで書くと推測も莫迦ばかしいでせうが、ここまで文句を書き連ねたのは、SHV33からの機種変更を考へてゐるからである。機械に不満があつてだからではない。電池の保ちは少々惡くなつてはゐても、普段の利用に致命的でもなく、動作に問題が發生してもゐない。自分の使ひ方に掛かるコストが大きすぎぢやないかと思へてきて、さう考へても携帯端末を手放すわけにはゆかず、さてどうするのが最善…ではなくても、今よりはましになるのか。上に書いた通り、MVNO(所謂格安SIM)を使はうとは思はない。docomoSoftbankに変更する方法はあるけれど、それでメリットがあるのかどうか。15年くらゐ使つてゐるキャリア・メイルを手放すのはどうも躊躇ひを感じるし、家族があつて一緒に変更するなら色々あるだらうとして、さういふ環境ではないから、考へから外してもよささうである。なので(料金体系の複雑さは罵倒の限りを尽したいのだが)今契約してゐるauでの変更を前提にする。

 auが扱ふ端末はandroidiPhone、それからガラホとも呼ばれるandroidベースのフィーチャーフォンガラケーの3種になる。その中で先づiPhoneを論外にするのは、わたしがappleといふ会社の製品を好んでゐないからなのが大きい。付加価値商賣を否定する積りはないが、今のiPhoneは、その付加価値の方に高値をつけてゐる。androidスマートフォンも省かざるを得ない。ランニング・コストに疑問があつてだもの。詰り殆ど自動的にガラケーからの撰択を迫られることになつて、これがまた悩ましい。撰べるだけの機種がないからで、これはauの怠慢なのか、メーカーの手抜きなのか、どちらにしてもユーザの立場としては迷惑極まりない。辛うじて期待していいかと思へるのは、この稿を書いてゐる時点では發賣前のINFOBARxvくらゐで、實機を触つてゐないから、何とも評価が躊躇はれる。画像を見るかぎりの印象は“手への収まり次第で、惡くはなからう”であつた。實物を持つて、これあいかんと思つたら、SHV33にはまだ暫く頑張つてもらはねばならない。かういふのは贅沢とは云へず、我が儘と呼べないとも思へて、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏なら、どんな結論に到るのだらうか。