“令和”が新しい元号だといふ。
“レイワ”が訓み。
典拠は萬葉集(巻五/詞書)ださうで、我が邦の古典から引かれるのは初めてとのこと。
元号に“令”が用ゐられるのは初めて。
対して“和”は二十回目。
新人とヴェテランの共演といふことになる。
取り急いで[漢字/漢和/語源辞典:OK辞典]で“令”のを調べると
https://okjiten.jp/sp/kanji686.html
①「命ずる」、「いいつける」
②「法令などを世の中に広く知らせる」
③「みことのり(天皇の命令)」、「君主の命令」
④「のり(法律、規範、おきて)」
(例:律令)
⑤「布告書(広く国民に知らせる書類)」
⑥「いましめ(前もって注意する事)」、「教訓(教え)」
⑦「おさ」、「長官」
(例:県令)
⑧「よい」、「立派な」、「優れた」
(例:令名)
⑨「他人の親族に対する敬称」
(例:令兄)
⑩「皇后、太子、諸侯などの命令文」
⑪「しむ(~させる)」
⑫「しめば(~だとしたら)」
⑬「もし」、「たとい(たとえ)」
(例:仮令、縦令)
⑭「とし(年)」
(例:年令)
念の為に[漢字辞典オンライン]でも確かめると
https://kanji.jitenon.jp/sp/kanjib/632.html
[1] いいつけ。上の者からの指示。
[1] おさ。長官。
[1] よい。すぐれた。立派な。相手の親族を敬っていうことば。
[1] のり。おきて。決まり。法律。
[2] しむ。せしむ。「令AB~」の形で、「AをしてBせしむ」と読み、「AにBをさせる」の意。
“上位者からの指示”といふ些か高圧的な意味合ひと、“よい/優れた/立派”の意が同じ文字に含まれてゐるのは不思議だが、まあ八釜しいことは云ひますまい。
ところで詞書は兎も角、巻五の冒頭歌を見ると、大伴旅人が詠んだ“太宰帥大伴卿の凶問に報へたまふ歌”で
禍故重畳、凶問累りに集まる。永に心を崩す悲しみを懐き、独り腸を断つ泣を流す。但両君の大助に依りて傾命纔に継ぐのみ。筆言を尽さず。古今歎く所なり。
世の中は空しきものと知る時しいよよますますかなしかりけり
といふ序言も含めて何とも寂しい一首だつたから少し驚いた…そんなところまで気にしなくたつて構はんでせうと云はれたら、確かにその通りなのだけれど、わたしに限らずちよいと調べたひとだつて、少からずゐるのではないだらうか。
ここで今上陛下に、新しい元号を言祝ぐ(景気のいい)一首をお詠み頂ければと思ふのは、贅沢な望みなのか知ら。