閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

517 曖昧映画館~ガメラ2 レギオン襲来

 記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。

 

 平成ガメラ三部作と呼ばれる三本の二作目。時系列で云ふと、前作『ガメラ 大怪獣空中決戦』の續き、次作『ガメラ3 邪神覚醒』の前日譚に当る。三作を順に観るのが一ばんいいと思ふが、どれか一本を撰ぶなら、わたしはこれを採る。前作を知らなくても十分に樂める。

 北海道に隕石が落下した。自衛隊が出動し、現場に行き着いた時、隕石が見当らない計りか、制動をかけたやうな痕跡が残されてゐた。

 その後、妙な事象が發生する。光ファイバーの不可解な消失。麦酒工場では一万ダース分の壜が失くなつて仕舞ふ。

 それは隕石が落ちた地点から、時間に沿つて移動してゐることが解る。落ちたのは本当に隕石だつたのか。隕石でないとすれば、何なのか。被害はじわりと、そして札幌で突然に拡大する。

 どうやら飛來したのは一種の植物(劇中では"草体"と呼ばれる)と、共生する生物("ハキリアリのやう"と呼ばれる)で、"草体"には次の繁殖地へ、種子を發射する目的がある。酸素の濃度を高め、爆發させると考へられるのだが、その影響は

 「札幌を中心とする、六キロ圏内は壊滅」

と推測された。自衛隊が何をどうしても対処出來る範囲ではない。そこに三陸沖から報告が入る。

 ガメラ出現。

 人間たちはレギオンと名附けられた飛來生物の生態を探りつつ、対応策に苦慮を迫られる。次の出現は、札幌より温暖で、電波の密集する地域だらう。併し何がなんでも、東京への侵入は防がねばならない。共存の可能性がゼロの生物を相手にヒトは、文明は生き延びることが出來るのか。

 レギオンの生態を推察する過程が些か乱雑で、また正確なのは気に入らない。また自衛隊ガメラへの対応も、前作の経過と、レギオンの現出を考へれば、敵視の姿勢が不自然に思へるけれど、こちらはスーパーXやメーサー車が實在しない日本が舞台だから止む事を得まい。もつと云へば、ガメラに起きた"奇跡的な"事象を投げ出してゐて、詰めのもの足りなさ…この点は次作で一応は取上げてゐるが、駆け足な上にオカルト趣味で感心しなかつた…もありはする。

 とは云ふものの、レギオンの造形は美事だし、怪獸の巨きさを感じさせるのも巧い。取分け足利までレギオンを追つたガメラが、着地から横ざまに土煙を上げて滑りつつ、火球を連射する場面は、三部作すべての中でも指折りと云へる。現代の目で観ると、脚本のあまさや技術的に苦笑の浮ぶ箇所も散見されるが、下らない愛だの生命讃歌だのを謳はず、娯樂に徹さうとした点はたいへんに宜しい。映画の最後、主人公のひとりは雑談の中、ガメラはもしかして、人類の味方なのでなく、地球の生態系を護るのが目的ではないかと考へる。では人類がその生態系を壊すとしたら。

 ガメラの敵には、なりたくないよね。