閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

716 赤くて辛くて旨いやつ

 どこだつたか、確か福島だつたと思ふが、實にうまい。

 麺の上に乗つてゐる赤いやつ。

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 すりおろした生姜と(多分)唐辛子を混ぜてどうかしたやつの壜詰でからい。

 鍋ものや湯豆腐の藥味は勿論、蕎麦やにうめんに乗せてよく(にうめんなら、温泉卵を落としたい)、焼き餃子によく、ごはんに乗せ、海苔で巻くのもうまい。一体にわたしは辛いのが苦手なのだが、何事にも例外はあつて、この生姜…と大坂の家では呼んでゐる…はその例外に含まれる。

 聞いたところだと、一箱に五壜入りで三千円とか四千円とかするらしい。序でに云ふと、半ダース入りの函に入つて、一壜分の空きにおまけがあるさうで、そちらは大体、外れだともいふ。三千円とは中々にいい値段だと思ふが、一回に使ふのは小匙に一杯か二杯程度だし、上に書いた通り、色々に使へもするから、ひと壜あればあれこれ長く樂める。尤もひとりで食べるには些か量が多い。あの赤くて辛くて旨いのを、手元で直ぐに食べられないのは残念でならない。