閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

718 汁もののひとつに

 冬の時期の食事に、あつて必ず嬉しいのは汁ものだと、これはまあ断言しても反論はされまい。お味噌汁でも粕汁でも豚汁でも、或はポタージュ、範囲を拡げて雲呑や水餃子。何にせよ嬉しく好もしく、また望ましい。具がたつぷり入つてゐれば、ひと椀で食事が完結するのも有難い。と云ふと、眞面目な讀者諸嬢諸氏から

 「汁ものの用意は、ちやんと出汁を引いて、具を調へる必要がある。雜に云ふものぢやあない」

と咜りつけられるだらう。さう咜られたら、確かにその通りで反論の余地は無い。併し居直りは出來なくもない。画像がその證拠で、何かと云へばお餅の汁もの。

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 お餅はトースターで焼く。つゆは市販の饂飩用。焼けたお餅をはふり込めば完了。前日が鍋ものならそのつゆを使へばよく、煮ものの残りがあれば、つゆと一緒に温めるだけで、ちよいと豪華な感じになる。気をつかふのはお餅の焼け具合くらゐか。調理と呼べるほどの手順ではないし、(序でに)お雜煮と称せるほどでもない。尤も時間は大して掛らない上、お腹の減り具合にあはせ、お餅の数の調整も出來るのは便利である。朝めしにいいのではなからうか。

 「何とまあ、邪道な」

呆れる聲が聞こえなくもないが、別にかうでなくてはならぬと強弁するのではない。手を掛けたければ(いちいちは具体的に挙げないけれども)幾らでも掛けられるし、それに我が親愛なる讀者諸嬢諸氏だつて、寒い朝に汁椀が出たら、きつと嬉しいでせう。その撰択肢の中に、このごく簡便なお餅の汁ものを入れても、損にはならないと思ふ。如何か知ら。