日本の文學者たち/筑摩書房
少し豪華な装訂の、まあ文庫本と云つていい。
一冊千円で全五十巻。筑摩はよく全巻を出せたと思ふし、わたしもよく全巻を買つたと思ふ。尤もほぼ、目を通してはゐないのだけれど。
画像は第三回配本の第三巻、内田百閒で、平成三年の第一刷。装訂は安野光雅。赤瀬川原平の「宇宙人の私小説」と題した一文と、簡単な年譜が添へてある。他の巻も似たやうな構成になつてゐるのだらう。
帯を見るに鶴見俊輔、森毅、池内紀、安野光雅、そして井上ひさしの名前が"編輯協力"として挙つてゐる。"編輯"にどこまで"協力"したのか。そもそも何を切つ掛けに企画されたものか。ちよいと調べれば裏話も逸話も判らうが、この手の話は知つたところで、呆気ないのが通り相場でもある。
文學への熱情にあふれた青年編輯者がきつと、社内の反対を押しきつて實現に向けて動いたのだ。
さう想像して、後は何もせずに置いておく方が、かういふ全集を樂むのに、相応しい態度の気がする。