閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

805 好きな唄の話~Zean Zean

 昭和の終り…千九百八十年代の後半、ほんの一瞬、併し強烈な輝きを見せた…PINKはさういふバンドだつた。

 わたしと近い年代の小父さん小母さんはきつと、ソニーが提供した『Music TV』の洗礼を受けた筈で、そのオープニングに採用されたのが、この唄…正確にはその一部分だつたと記憶してゐる。

 ロックといふか、ポップスといふか。

 

 兎にも角にも巧い。

 

 としか云ひやうがない。

 尤も今、この唄を改めて聴くとPINKは、恐ろしく高度な技術を誇る"個人の集団"だつたのだなあと思へてくる。わたしの印象だから、信じられると困るのだが、最終的に空中分解したのも無理はない。福岡ユタカホッピー神山とスティーブ衛藤が長く、共同で作業出來るものか。

 發表したアルバムはたつたの五枚。

 併しその鮮烈な音は卅数年を経た令和になつても、未だ耳の底にこびりついてゐる。この唄は確かに、その始まりを高く宣言してゐた。さう考へた時、『Music TV』のオープニングに採られたのは、象徴的であつたと云つてもいい。