閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

806 漫画の切れ端~ライム博士の12ヶ月

 記憶に残る旧い漫画の話。

 

 正直に云ふと、記憶には殆ど残つてゐない。

 

 宇宙人の船から落つこちた(らしい)ロボットが、ライム博士の庭に転がり…いや墜落したところから、話は始まる。

 始まるといつたつて、劇的なことは起らない。最後まで名前のはつきりしないロボットは、壊れてゐるのか最初からぽんこつなのか、傍若無人、我儘勝手なままで、徹頭徹尾、善良なライム博士はそれに振り回される。

 それでもロボットがゐる日々が当り前になつたある日、宇宙人がロボットを回収にやつてくる。どうも宇宙人にも事情があるらしいが、そこは曖昧なままである。ロボットを取り戻す時、ライム博士のロボットに纏はる記憶も消したから、その辺はちやんとしてゐる。

 併しロボットは自分の意思(なのだらう)で宇宙船から逃げ出す。宇宙人は見て見ぬふりをする。綿密なのかいい加減なのか。ロボットは再びあの庭に降り立ち、記憶を消された筈のライム博士は、迷子の仔犬を迎へるやうな、当り前の態度でロボットを受け入れる。

 

 ああ、これはドラえもんのファンタシー版なのだ。

 ぜんたいに淡くちすぎるけれど、それを瑕疵と呼ぶには当らない。妙に忘れ難くつて、映像にすれば…よほど丁寧に作る必要はあるにはしても…、寧ろアメリカでうけるんではないだらうか。

 

 さういふ短篇聯作だつたと思ふが、自信は無い。