閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

855 今年に買ひたいカメラ(とレンズ)の話

 物慾の話ですよ、要するに。

 

 第一番にリコーのGRⅢを挙げるのは云ふまでもない。小さくてかるく、寄つて撮れて、フラッシュを内藏してゐない。現時点の私にとつて、最良の撰択であると信じてゐる。

 

 ぢやあ他にあるのかと、さういふ疑問が浮んで、それがどうもありさうな気がされる。入手が現實のこととなつたら、使ふのかどうかといふ疑念が續かなくもないが、そつちを気にしだすと、纏まる話も纏まらなくなる。

 

 同じリコーのペンタックス銘には一眼レフがある。ニコンキヤノンもこの形式を縮小…事實上の撤退といつていいと思ふ…してゐる現状、今後一眼レフを使ひ(續け)たいとしたら、これまた事實上、ペンタックスがほぼ唯一の撰択になるのではないか。尤も一眼レフは構造の都合で、どうしても大振りになり、重くもなる。老人(さう自認するのに吝かではない年齢になつた)が今から入手したところで、きつと持て余してしまふ。

 

 GRⅢは別枠に置いて、他に気になるカメラは確かにある。

 發賣順にニコンZ50とキヤノンEOS R10がそれ。

 どちらもAPSフォーマットのミラーレス機。どちらにもフルサイズ…ライカ判フォーマット…の機種があるのは知つてゐるが、そちらには興味がない。レンズの大きさと重さは、カメラが採用するフォーマットの大きさに(ほぼ)比例するからで、そんなのを持ち歩きたくなるだらうか。

 APSフォーマットのミラーレス機であれば、富士フイルムにもソニーにもある。ただ性能の面は兎も角(實際わざわざ文句を附ける必要もない)、前者は価格で折合ひがつかず、後者はスタイリングがどうにも気に入らない。財布と好みといふ、まつたく客観的ではない事情なので、それぞれの愛好家にはお平らにお願ひしますよ。

 

 Z50とR10が気になるのは(許容範囲に入るだらう)大きさと重さ、それから惡くない(と思へる)程度のスタイリングを兼備してゐるからで…さてどちらが好もしいだらう。

 

 性能で比較するのは意味が無い。現代のカメラなんだからね、私が使ふ分には寧ろ、機能の過積載と云つてよく、詰りそれ以外で考へざるを得なくなる。

 見た目はR10の方がよささうである。EOSの見た目に馴染みがあるからさう感じるので、キヤノンはこの辺が巧い。あるメーカを撰ばうとする時、スタイリングの一貫性は大事な要素なのだが、ニコンはそこが實に不器用だと思ふ。

 尤も一貫性とか何とか、八釜しいことに目を瞑れば、Z50も惡くはない。"(スタイリングの)流行に遅れてから乗る"ニコンの惡癖が見えはするが、そこはもう嗜好の範疇である。私の場合は(辛うじて)収つてゐると云つておかう。

 R10のRFレンズと、Z50のZレンズを競べると、今のところは後者が半歩ほど優位に思へる。小さくてかるい(単焦点)レンズでの比較であつて、そこに目をつけるのは、私がさういふレンズを好むからである。

 

 だつたら常用のマイクロフォーサーズで、レンズを追加する方が、お金の遣ひ方としては有用ではないか。

 と自問する聲がある。

 その通り、わざわざ新しく、異なるマウントの機種を増やしたつて、使へる筈がないだらうに。

 さう自答したくなる気分もある。

 確めるとオリンパスには9-18ミリ、12ミリ、17ミリ、25ミリに45ミリが、パナソニックなら9ミリ、20ミリ、25ミリがある。サード・パーティ(たとへばコーワ)にも何種類のレンズがあつて、そつちを充實さすのが健全…眞つ当な態度なのは間違ひない。

 (再び)だつたら、ペンタックスだのニコンだのキヤノンだのに視線を向けるのは何故だらうとなるのは当然で、それが物慾なのだと居直るのは簡単だけれど、マイクロフォーサーズのレンズを慾しがるのだつて、物慾ぢやあないかとする反論は成り立つし正しくもある。

 

 思ひかへすに、キヤノンニコンペンタックス(正確には同マウントのリコー)は、挙げた順に銀塩の一眼レフを買つた経緯がある。

 (コンタックスミノルタも買つたけれど、共に今はなくなつてしまつた)

 だとすると、私の物慾には懐古趣味が含まれてゐる可能性が高い。實際ペンタックス…Kバヨネット・マウントのマニュアル・フォーカスは三本くらゐあるし、Sマウントを使ふ為のアダプタ(買つた当時は千円だつた)も持つてゐる。

 そこで話が冒頭に戻つて、ペンタックスの現行機にKFがある。ざつと見た限り、Sマウントを含む旧式レンズも使へる(多少の制限が掛かりはする)らしい。この辺は"不変の"ニコンFマウントより融通が利く。18-50ミリと21ミリ、それから40ミリのどれかがあれば…いや三本纏めてでもいい…、当り前に使へるし、優先順位第一番のGRⅢともあふ。物慾の發露としては惡くない。物慾の話ではあるけれども。