今にして思ふに、SPECTRUMは出てくるタイミングが面妖としか云へないグループだつた。
奇嬌と云ふ他にない衣裳を纏つたかれらは、ぬけぬけと踊りながら、優れたテクニックをも身に附けてもゐて、推測だけで云へば、後年の米米CLUBのステージは、SPECTRUMのパフォーマンスに遡れるのではないか知ら。
併しSPECTRUMなら『IN THE SPACE』だらうと呟く讀者諸嬢諸氏もゐると想像は出來て、尤もだなあと思ふ。こつちを採り上げたのは要するに、この唄を入場曲にしてゐた、スタン・ハンセンのファンだからである。
定期的に來日を續け、トップランカーであり續け、日本のファンに愛され續けたプロレスラーとして、ハンセンの名前はこの國のプロレス史に大きく刻まれてゐる。實際かれに並ぶビッグネームは、アブドラ・ザ・ブッチャーとタイガー・ジェット・シンくらゐと思ふのだが…話が逸れてゐる。
正直なところ耳に馴染んだのは、ハンセンの入場バージョンだが、オリジナルを聴いた時、ハンセン版では相当のアレンジメントが施されてゐたのだと判つて、びつくりしたのは忘れ難い。その良し惡しはさて措き、原曲の骨がハンセン並みに頑丈でなければ、令和の今に聴いて、恰好よく感じられはしなかつただらう。