閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1089 まつたく悩ましい

 マイクロフォーサーズが悩ましい。

 ボディが四台(オリンパスが一台、パナソニックが三台。内パナソニックの一台は大坂の家に置いてある)と、レンズが五本(パナソニックが四本にシグマが一本。内パナソニックの一本は矢張り大坂の家)があり、レンズはまあいいとして、ボディが悉く旧機種だからこまつてゐる。

 

 だつたら新しいのを調へれば済むでせうに。

 

 呆れられるだらうが、それも叉こまる。何せ主力にしてゐるGRⅢが採用するAPSフォーマットは、マイクロフォーサーズより一回りくらゐ大きい。併しマイクロフォーサーズのボディは、GRⅢより大きい。カメラの位置附けがちがふのだから、随分と乱暴な比較なんだけれど。

 もつとこまるのは、マイクロフォーサーズ規格が事實上、終つたのではないかと思はれることにある。パナソニックには、Lマウント・アライアンス規格に夢中な気配が濃厚だし、マイクロフォーサーズに特化してゐる筈のオリンパス…今はOMデジタルソリューションズだつたか…には、継續の余力が無ささうに見える。

 かと云つて、四台のマイクロフォーサーズ機に、賣りはらつて買ひかへの足しに出來る程の値うち(中古市場での値段程度の意味)は無い。これもこまつた点で、これらを鑑みつつ想定出來る対処としては、下記が考へられる。

 

・現状を維持し、継續使用。

・止む事を得ず現状を保持し、新品叉は中古でも新しい世代のボディを入手。

・遺憾ながら現状を放置し、レンズ交換の可能な別のフォーマットへと移行。

 

 撰択が六つかしい…さう思ふのは当り前で、これからマイクロフォーサーズと、どうつき合ふのがいいものか、決めかねてゐるんだもの。それに私が今、主に使つてゐるのは、云ふまでもなくGRⅢで、そことの整合性を取る必要もある。尤も整合性の点に就ては(大きな聲は控へるが)、GRⅢはズームや望遠といふ"特殊な條件"を除くと一種の万能機だから、そこまで気にしなくてもよからう。

 

 かういふことを書くのは、新しい玩具を慾しがる気分…要するに物慾の顕れである。そこを認めつつ、續ければ、異なるフォーマットへ移るのは實のところ、あまり現實的でないと思つてゐる。それは異なるインタフェイスを覚えねばならないのと同じ意味で、こちらの余命が追ひつかない可能性がある、といふより高い。からうじて、銀塩の頃に使つてゐたキヤノンなら、どうにかなりさうにも思へるけれど。

 詰り物慾に則るなら、マイクロフォーサーズ規格はそのまま、(比較的)新しい機種の入手が、手持ちのレンズを使へる面でも現實的な撰択として浮んでくる。我ながらロジカルな物慾だなあ…と思つて、先づは現行機種がどんなものか、確め、そしてびつくりした。このびつくりは決して好意的ではなく…露骨に云ふなら、酷いなあとびつくりした。念を押すと、機能をくさす意味ではない。何をどう云へばいいか、兎に角ぱつと見、慾しいと思へる機種がなかつたんである。

 問題ではありますまいか。

 云つちやあなんだが、手に持つて使ふ機械である、だらけたスタイリング…まあ、この程度に纏めておけば、かまはんでせうな…に感じられては、話にならない。私がマイクロフォーサーズ規格は終つたのではと思ふのは、機能性能価格といふより、(現行機の)見た目の惡さに尽きてゐる。

 併し旧機種(の一部)には、及第点を差し上げられる出來があつたのも事實である。フォーマットから導き出される筐体のサイズ、そこに組み込みたい機能、その機能を使ひ易くする部品の配置と操作系の順に追つてゆけば、合理的合目的的なフォルムに達する。前提となる取捨撰択…正確を期せば、どこまで削り落すかの判断…に誤りがなければ、そのフォルムを綺麗に仕上げるのは無理難題とは云へない筈なのに、何故かうなつたのかと思つたら、物慾の芽が枯れさうな気分になつて仕舞ふ。

 

 マイクロフォーサーズは悩ましい。

 まつたくのところ、悩ましい。