閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1095 イチナナ、あらはる

 この手帖の[1045 噂と期待]で、ペンタックスがハーフサイズの銀塩機を出すらしいことに触れた。本当かなあと思つたし、これを書いてゐる現時点で、製品の公式な發表はなされてゐないから、今も疑ひの気持ちは抜けきれてゐない。但しリークと称した画像には、「PENTAX17」とあつて、もしかして、本当に出すかも知れないと思つてもゐる。

 その画像は正面からの一部。中央上部に縦長のファインダとおぼしい箇所があつた。フヰルムは横送り、縦位置で撮るのが基本なのだらう。巻き上げと巻き戻しの形状は、はつきりせず、アクセサリ・シューは載せてゐないらしい。外装はプラスチックか。ペンタックスもリコーもプラスチックの使ひ方は惡くないし、骨骼にはダイカストを採用するだらうから、心配は要るまい。

 

 …と、ここまで書いところで、ペンタックスが發賣を明かにしたから驚いた。プレスリリースは以下。

 

 『ハーフサイズフォーマット単焦点フィルムコンパクトカメラ

PENTAX 17」を新発売』

https://news.ricoh-imaging.co.jp/rim_info/2024/20240618_040027.html?_ga=2.52691176.1189402578.1718676307-815325004.1718676307

 

 詳しい仕様は上を見ればいいから省略するとして、気になつた点を幾つか挙げる。

 

・ライカ判換算で卅七ミリ相当のレンズが、HD PENTAX銘であること。ここは(嘘でもいいから)タクマー銘を採つてほしかつたなあ。

・巻き上げレヴァが小さなこと。何となく安つぽい感じがされて感心しない。

・電池入れを兼ねたグリップが不似合ひなこと。オプションでかまはないから、フラットに出來る交換可能なグリップを用意してもらひたいところ。

・縦吊り横吊りどちらでも、ストラップを附けられること。我が常用するGRⅢと同じくなのは、好感が持てる。

・上から見たファインダ部にAOCOマークがあること。これは好もしい洒落つ気に思へる(他の文字がごちやついてゐるのは、些か残念だけれど)

 

 上のプレスリリースによると、販賣価格…オンラインショップでの値段だらう…は、消費税別十万と七千円。レンズを新たに設計し、金型も造つたと思へば、不当な値つけとは云へまい。率直に云つて、"爆發的なヒット商品"にはならないだらうから、ペンタックスが、どの程度賣れると踏んでゐるか、少々気になりはする。腰を据ゑて造り、見込みにあふ結果が出れば、新たな企画に繋がるやも知れない。

 さてそれで私は何うするか。ハーフサイズとは云へ、フヰルムの値段が(古老の視線で)信じ難くなつてゐる現状、十万円はぽんと出しにくい。一方でペンタックスの試みを支持し、応援したい気分もある。ハーフサイズは、オリンパスのペンSや京セラのSAMURAI Z2で親しんだフォーマットだし、何より「17」は好きな数字でもある。使ひ方を含め、じつくり悩みたい、悩みたいけれど、この手の機種は気がついたら、生産が終つたりするから、油断ならない。量販店に實物が並べば、散々弄れるんだが、六つかしいだらうか。