お摘みと肴を漠然と使ひわける癖がある。
前者の方が広く感じられる。肴は酒菜とも書くでせう。なのでお酒…日本酒の意味ですよ…にあはす時以外には使ひにくい、気がする。
獸肉でなく、バタの類を用ゐず、炒めない。
さういふ食べものが、肴ぢやあないか知ら。
根拠はないから、信用されては困るけれど。
話は肴に絞りませう。詰りお酒の供、或は友。わかい…とは年齢ではなく、呑む経験値的な意味合ひで云ふのだが…ひとは、お刺身…鮪、鰤、サモン辺りを挙げさうに思へる。判る。私もきらひではない。併し一ばんかと訊かれたら、さうではないでせうと応じる。
漬けや酢〆、煮たり焼いたり焙つたりした方が、お酒には似合ふのではありますまいか…など云つたら、年寄りじみた舌と胃袋と笑はれさうだね。そこは認めるとして、お刺身しか喜べないより樂めるのだ。これは寧ろ年寄りじみた舌と胃袋の特権と云つていいでせう。
さ。そこで画像に就て触れると、左に焼いた、右には焚いたお魚と、湯剥きしたプチトマトをかろく炊いたの。いづれも中々に結構な出來。サッポロの赤星を平らげてから(喉が渇いてゐたのだ)、木曾の[中乗]を呑んだ。この銘をためすのは初めて。冷藏庫から出した直後は、やや癖を感じる香りと舌触りだつたが、少し間を空けると、さういふのが纏まり穏やかにもなつた。この[中乗]にあはした二種のお魚とトマトを呼ぶには、お摘みより肴の方が似つかはしい。使ひわけの一例であらう。