YouTubeを彷徨つてゐると、時々妙に面白い動画を見ることがある。ここ最近、その妙に面白い動画を見つけて、何かと云へば、特殊な職場での食事事情に焦点をあててゐる。
たとへば航空自衛隊。
たとへば陸上自衛隊。
たとへば海上保安庁。
機動隊や消防隊、旧國鐡にも取材をしてゐて、いづれもじつに面白いが、中でも南極観測船しらせと、海上自衛隊の潜水艦の回が、興味深かつた。
海上と海中のちがひはあるとして、どちらも出航後、長期間の任務に就く点は共通してゐる。といふことは、限られたスペースに、必要な食材を詰めこむのと同時に、無駄を極力減らさねばない。陸空の自衛隊、海保や機動隊のやうに、基地があつてではないから、余程の工夫が求められる。さうさう、潜水艦取材に際しては、保存の工夫…保管庫は公開されなかつた。残念に思つたが
「保管してゐる量で、どの程度の期間、航海出來るか判つてしまふから、駄目なんです」
といふ理由からだつた。成る程、情報は色んな形で結びつくものなのだなあ。
ところで関連する幾つかの動画を見て、気がついたことがある。なにかを發見したとかではなく、地上海上海中に関らず、献立に必ずと云つていいほど、カレーライスがあるんですね。週に一ぺんとか、そんな頻度。
海自…海上自衛隊のカレーは、夙に有名でせう。旧海軍からの伝統だもの。曜日感覚を狂はせない為、毎週金曜日に用意するならはし。令和の今なら、直ぐに判るんだから、そんな必要はなからうと思ふのは間違ひで、元の事情が失せた後も残るから、伝統なんです。
それにカレンダー代りでなくても、定期的に出てくるカレーライスは、お正月に食べる御雑煮のやうに、時間の区切りをつけてくれる。波間の任務だらうが、陸の勤務だらうが、この辺の事情は、きつと同じでせう。我われで云へば、一日の終りに呑む罐麦酒…と云つたら、咜られるだらうな。
区切りの役割りだけではあるまい。第一に様々な材料の無駄遣ひをせずに済む。野菜屑や肉の切れ端を使ひきるのに、カレーライスほど便利な食べものはない。第二に玉葱や馬鈴薯や人参といつた野菜は勿論、とんかつ、コロッケ、唐揚げや諸々のフライとの相性もいい。第三に辛くち甘くち、あつさり、ごつてりと、バリエーションを広げやすく、作る方も食べる方も、樂みが多いんではなからうか。
何よりカレーライスが大好物と云ふひとは数多いにちがひないが、どうにも苦手でこまるんだなあと眉を顰めるひとは少からう。統計の裏打ち抜きに、勘で云つてゐるから、その辺は差引きしてもらふとして、強ち明後日の方を向いた推測でもないと思ふ。
とは云ふものの、ここまでカレーライスが飛び抜けてゐると、矢張り妙な気分になる。思ふのはまあ、こちらの勝手である。もしかすると、毎週末は御雑煮なのだ、といふ現場があつても不思議ではない。叉それが生姜焼きや鯖の味噌煮だつて、かまはなからうとも思ふが、それだと何となく収まりが惡い感じもする。要するに帝國海軍以來の伝統に裏打ちされた食べものが、偶々カレーライスだつたから、と云ふしかなささうで、ごく限定的で特殊苛酷な現場の習慣が、"恰好いいぞ"と拡がるのは、あり得る話だと思はれる。