閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1176 噂話のGRⅣ

 カメラ関連の噂を纏めたサイトで目にしただけだから、信憑性は非常に疑はしいのを前提に。

 令和七年にリコーから、GRⅣが出るといふ。

 情報の出処がはつきりしないから、ひと先づは怪しいと云つておきたい。一方でGRⅢの發賣は、平成卅一年(令和への改元は發賣後)だから、そろそろ次のモデルが出ても、不思議ではないとも思ふ。

 併し後継機が出るとして、それはGRⅣなのか知ら。GRⅢを常用する私からすると、手を加へてほしいのは、切り替へなしでのマクロモード移行、外附けEVF(GX100/200やGXRで用意してゐたから、作れるにちがひない)の採用くらゐなもので、それぢやあ精々、GRⅢセカンドですよ。

 

 出たら出たで、物慾をそそられる可能性はたつぷり、あるのだけれど。

 

 R1から始り、GRデジタルを経て、GRⅢへ到つたこの系譜の幸福と不運は、優れたスタイリング…全体のシルエットは勿論。(大まかな)部品の配置まで…が、受け容れられた点にある。わざわざ"これはリコーといふ會社のGR(Ⅲ)です"と、特筆大書しなくたつて、それと判るのだからすごい。かういふ機種は、GR以外にライカしか無い。

 たださうなると、"より優れた機能の為"に、スタイリングを変へるのが困難になる。たとへば液晶モニタを可動式にしたいと考へても、それで従來の姿が崩れれば

 「これはGRの系譜ではない」

 「GRとは別の型番を用意すべきだつた」

などと、自称"古くからのGRファン"から、批判が殺到するに決つてゐる。私も多分、さう云ふだらうな。

 だとすると、GRそのもの…イコンとして受け容れられたスタイリングが、次のGRを縛つてゐるとも見立てられる。であれば、GRⅢxやHDFといふヴァリエイション機を出したのは、Ⅳの番號を附けられるだけのモデルチェンジを、今のスタイリングに纏めきれない悲鳴にも思へてくる。

 裏を返せば、GRⅢは發賣以來六年、大改良が求められないくらゐの完成度なのだと見てよく、そんなら

 「無理やりGRⅣを出さずとも、かまはんのではないか」

さうリコーのひとに云ひたくなつてくる。

 

 噂話はもうひとつ、ある。GRⅢかGRⅣのヴァリエイションか、判然としないが、矢張り令和七年、モノクローム専用機が出るといふ。噂としては、こつちの方が、気になるし、實現する可能性が高さうに感じられる。ペンタックス銘の一眼レフ(確かK-3Ⅲだつた)で、数寄ものをざはつかせた経緯を思ふと、技術的な條件は既にクリア出來てゐるだらう。

 考へるに、小さな筐体とモノクロームは相性がいい。そこに私の決めつけ乃至思ひこみが、多量に含まれてゐるのは、まあ認めるとして、町中や食べものや、愛しい娘の笑つた顔を、白と黑のグラデイションに変換するのは、手に収まるカメラに許された、密やかな樂みではなからうか。モノクローム専用は、その樂みの点で寧ろ、好もしく感じられる。

 勿論そこで、花々の彩りや、輝く夕焼け、麗しのあのひとが身に着けたアクセサリの色合ひはどうなる、と異論が出るだらうとは、容易な想像だが、すりやあ

 「GRⅢか、來るべきGRⅣを使へば済む」

ことでせう。一藝特化仕様の機種に、万能さを求めるのは誤つた態度だもの。それにGRモノクロームなら、追加で贖つても、我が良心とお財布に云ひ訳も立ちさうだ、といふ事情もあるのだが、こつちは小聲にしておかう。

 

 さてここまで、つらつら書いてから、云ふのも何だが、落ち着けば、この稿は"あてにならない噂サイト"の記述を、前提にしてゐたのを忘れかけてゐた。登場が令和七年になるかは兎も角、GRⅣに関る計劃はGRⅢが完成した時から、始つてゐたにちがひない。GRデジタルⅡ…遡ればGR1vから、この系譜のユーザー(リコーファンの立場まで広げればXR-8以來)である私にすれば、あの會社がGR系に関しては、非常に慎重な態度で臨んでゐるのを知つてゐる。噂話は噂話に留め

 「さて次のGRは、どうなるのかなあ」

と期待するのが、あらほましい。かういふカメラは、少くなつてしまつた。