"ガンダム"の名を冠するアニメーションだの漫画だの、その他諸々の商品だのは、世の中に多すぎて、 何がなんだかもう、さつぱり解らない。中學生の頃、最初の所謂ブームが起きて、それは今、"ファースト"と呼ばれる最初のガンダムの映画化と、"ベストメカコレクション"名で出たプラモデル(当時はまだ、ガンプラといふ言葉はなかつた)が引つ張つたと記憶してゐる。
既に古老と化したガンダム好きから云はせると、その本筋は矢張り、テレビジョンなんぞの聯續アニメーション形式にあると思ふ。『∀ガンダム』はその續きもの形式の一本。放送前に、主役機の∀ガンダムのデザインを、シド・ミードが手掛けたことが話題になつた。もうひとつの話題が、主題歌を小林亜星が作曲し、西城秀樹が唄ふことで、『ターンAターン』がそのタイトル。
元々の意図が、"ガンダムの歴史をすべて含ませる"ことにあつた『∀ガンダム』…"∀"といふ記号のとほり…の世界を、鮮やかに示してゐる。作詞を受け持つた井荻麟の功績…と云へば、些か詐欺的になる。『∀ガンダム』の総監督を務めた富野由悠季の別名義だもの。
井荻…富野とガンダムの距離は、『Ζガンダム』以降、常に微妙だと思ふ。勝手な印象を云ふなら、今川泰弘に『Gガンダム』を、"今度はガンダムのプロレスだからね"と、投げ出して以來、"利用に便利な商品"扱ひしたいのに、何かしらの棘が抜けないまま、苛々してゐる感じ。その僅かな(もしかすると唯一の)例外に思へるのが『∀ガンダム』…『ターンAターン』で、そこには冷徹と救ひ、或は諦観が共にある。小林の練達と西城のつよい聲が、物語世界に密着し、結末へと収束してゆくことを思ふと、長大なシリーズになつ(てしまつ)た"ガンダム"の唄の中でも、最も優れた一曲ではないかと思はれてならない。