既に書いたとほり、東海道新幹線のぞみ號か、ひかり號を使ふのは、決めてある。念の為に飛行機を調べると、新幹線よりやや廉な便もある。但し空港への移動だの何だのを考へると、全体で新幹線と大してちがはない。
序でだから、船の経路も調べてみた。こつちは東京乃至その近郊から、大阪港神戸港に着到する航路はない。辛うじて小倉行きだつたかの便が、徳島に立ち寄るくらゐだから、阿波讚岐に用件のない限り、西上の路としては撰びにくい。
こんな風に調べてゆくと、改めて鐡道は、實によく出來た移動、交通の手段だなあと思はされる。土地によつては、自家用車だのバスだのの利便性が勝るだらうが、少くとも東京大坂間なら、鐡道…東海道新幹線が、望ましい手段の上位にあると、今の時点では決めつけていいでせう。
さて何を持つて帰らう、と考へる時、それは概ねカメラなのだが、今回はGRⅢに決めてゐる。残るはマイクロフォーサーズをどうするかで、少々悩ましい。荷物を減らす一点に絞れば、持ち帰らない判断になる。
レンズだけ持ち帰つて、大坂でボディをどうにかする方法も無くはないが、その場合、どうにかしたボディを置いておくのか、東都に持ち帰るのかが課題になる。
ボディだけにして、慾しいレンズを贖ふ手もある。併し慾しいレンズは大体、持つてゐる。気になるレンズに範囲を拡げても、手に入る保證はない。詰りいい方法とは云へない。
そもそも、カメラを何台持つたところで、シャッターを切る指は一本きりなのだ。迷ひの種は少い方がいい。改めて年末年始は、GRⅢ(とそのアクセサリ類一式)だけとする。
他にはスマートフォン周りが、嵩張りさうである。と云つても、こちらは電源ケイブルとそのアダプタ、卓上に置く時のスタンド(折り畳み式のやつ)くらゐだから、GRⅢほどの分量にはならない。
かういふことを書くのは、荷物の嵩張り次第で、ColemanだつたかGREGORYだつたかのデイパックに、何をあはすかが決まる、或は変るからである。
例年はトートバッグを使ふが、手元には今、適当な大きさ重さの容量のバッグが無い。DOMKEの中を抜くのは考へられても、何となく違和感がある。違和感は即ち気分に属することだから、踏み込んだ説明は六つかしい。視線をトートバッグに戻すと、わりと好みははつきりしてゐる。
縦型の布製。
マチ附き。
底に鋲を打つてあれば更にいい。
ポケットは外内に二箇所以上。
叉カラビナフックを附けられる工夫も慾しい。
それで頑丈且つ軽量なのが望ましいのだが、文字にすると贅沢…ではなく、無理を云つてゐる気がする。どこそこのブランド…たとへば一澤や犬印…がいい、などと云ひはしないけれど、無愛想で使ひ易いトートバッグを造る會社は、存外少さうに思はれる。
もうひとつ、目星をつけておきたいのは、のぞみ乃至ひかり號で、何を食べませうかといふこと。
幕の内辨當がいい…と思ふのは、こだま號で悠々過せる場合に限る。梅干しや金平でごはんを平らげてから、焼き魚に揚げものに煮ものに佃煮、ハンバーグやらコロッケ、スパゲッティのケチャップ炒め、お漬けもの…この渾沌具合が、幕の内辨當の樂み…、叉別に用意したチーズを摘みながら、罐麦酒(二本)と葡萄酒(小壜)をやつつけるのに、のぞみやひかりでは速すぎる。
併しお辨當を食べないのは詰らない。
何の為の東海道新幹線なのかと思ふ。
さうすると、賑々しいオールスター形式ではなく、一品料理風、且つ食事とお摘みを兼ねられさうなのが、どうやらよささうな気がされてくる。とんかつやローストビーフのサンドウィッチ。鱒や鯵の押し寿司。有名なところでは、日本食堂のチキン弁当や、崎陽軒のシウマイ弁当辺りなら、多すぎてこまる心配もなからう。尤もこの時点で決める積りは毛頭ない。結論は当日の腹具合や気分で、決めればいい。その時まであれこれ、想像を膨らますのだつて、東海道新幹線の乗客になる樂みのひとつなんだもの。