閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1195 テイルと大根

 顆粒出汁とコンソメ、出來れば昆布も加へたい。

 大根を下煮。

 そこに矢張り下煮したテイルを入れ、塩と胡椒で味を調へればいい…と話を聞いた。

 作つた本人の言である、間違ひはない。

 後日、このお出汁を使つて、カレーに仕立て直すから、味つけは控へめにし、お好みで和辛子を添へて食べる。

 實にうまかつた。

 御行儀は惡いけれど、骨の部分を摘んで、隙間に埋もれた肉までしやぶつた。

 しやぶりながら、尊敬する檀一雄が、殊の外、牛タンとテイルを好んでゐたのを思ひだした。

 どこだつたかの洋食屋では、タンシチューとテイルシチューを半々にしたのを、檀の為に用意し、ダンシチューと呼んださうで、かういふのを幸せと云ふのだな、きつと。

 テイルと大根の組合せは、おでんに近い仕上げだつたが、たとへばお出汁にトマトを追加して葱を入れ、洋風シチュー風にしても、洒落た一品になりさうである。

 尤もテイルの下拵へなんて、私の手には負へず…我が親切な讀者諸嬢諸氏に、是非とも作つてもらへまいか。

 葡萄酒を一本と、チーズを持つて、游びに行くから。