開發時は、ホップを使った麦酒風飲料なので、ホッビーと呼んでいたが、語呂も響きも宜しくないので、發賣にあたってホッピーにしたという。因みに開發を始めたのは大正十五年…昭和元年。發賣は昭和廿三年だから、たっぷりと時間を掛けたことになる。
これらのことは、ホッピービバレッジのWebサイトを見て知った。詳しくは以下を見ましょう。
初めて呑んだのは、どれだけ遡っても、卅年より前にはならない。東京中野にあった[山ちゃん]で教わった。こってりしたもつ煮とポーク・ランチョンミートの炒めものと焼き魚が素敵で、偶に奥から出てくる(だから品書きには載っていない)泡盛が樂みだった。
その[山ちゃん]で、定聯のお客が次々註文していたのがホッピーで、中だの外だの、何だろうと思っていた。それで或日、あのホッピーてのはなんですと訊いたら、焼酎の割りものですよと返事があったから、ものは試しに註文した。
氷入りジョッキに銘柄の判らない焼酎。それと壜麦酒を縮小したような壜、詰りホッピーが出てきた。
ホッピーをお好みの量で、割ってください。
焼酎のお代りは"中"で、ホッピーは"外"です。
ははあ、成る程。感心したのか納得したのか、兎に角ジョッキにホッピーを注ぎ、添えられたマドラー…見た目はただのプラスチック棒でざっと混ぜて呑んだ。
(何というか、ほの甘いなあ)
最初にそう思った。尤もそのほの甘さに、べたついた感じはなかったから、厭ではなかった。
馴れるまでは何度か、失敗した。麦酒のように呑むと、早く醉つてしまうのだ。我を失うには到らなかったけれど、困った飲みだとは思った。呑み方を違えたのはこっちだから、ホッピーにも焼酎にも、責任はない。
馴れるまでと書いた。詰り[山ちゃん]で教わったホッピーを私は、気に入ったことになる。他の呑み屋にも、ホッピーがあると判ったら、註文するようになった。店の名前は失念したが、そこでホッピーには白と黑があると知った。[山ちゃん]のは白だと判ったから、黑を註文してみた。
(黑麦酒みたいな感じなのか知ら)
と考えながら呑んだ。白がお摘みを撰ばない淡泊さなら、黑は喉の奥に残るので、お摘みは濃いめの味つけが似合いそうに感じられた。もしかして、"中"のちがいもあったろうか。
そうやって呑み續けると、ホッピーの量が大体、定まってきた。"外"一本に対して、"中"を三杯程度にすると、ほどほどに醉えて、もつ煮と串を何本か(或は揚げもの一皿)、サラドの類にも丁度いい。この辺は何度か、でなければ何度も呑まなければ掴めない案配なのだ、と胸を張っておこう。
と思っていたら、まだまだホッピーの奥は深かった。[せんべろnet]というWebサイトの
ホッピーとは?ホッピーの基礎とおすすめの飲み方
(ホッピーの中とは?)
でその一角が伺える。勿論ホッピービバレッジのWebサイトにも、細やかな解説はあるけれど、上は常日頃の呑み助が書いている分、説得力がちがう。一讀、色々の樂み方があるものだと感心した。尤も焼き鳥や串かつや種々の煮ものや炒めものやお刺身、どんな組合せで、どんなホッピーを呑んでいるのか、書き添えてあれば、参考になったのにとは思うけれど、贅沢且つ我が儘な態度でしょうね、これは。
「そういうのは、自分で呑んで食べて、見つけるから、樂いんじゃあないですか」
せんべろさんならきつとそう云うだろうし、その指摘はまったく正しい。なのでこれから、ホッピーを置いてある、馴染んだ呑み屋に出掛けようと思う。
蛸の唐揚げ。
マカロニサラド。
ハラミと葱の串焼きは塩。
それから鶏皮ぽん酢。
順に摘みながら、"中"を三杯…そうなったら、外題は間違いということになるが、まあその辺は、ぐっと呑み干して、誤魔化すとしましょう。