『カメラバカにつける薬3』
飯田ともき/インプレス
第二のカルテから一年。
どうやらこのシリーズ、毎年のカメラショー(今はCP+と呼ぶのだつたか)の時期に新刊を發行するのを、流れにする積りらしい。商ひが巧い。皮肉ではなく、賣れなければ、續刊を出せなくなるのだ、寧ろ正しい戰略と云つていい。
新宿西口ヨドバシカメラで贖入。帰宅して罐麦酒を呑みながら、ゆつくり頁を捲り、ひとりにやにやした。
構成…編輯方針は前巻を引き継ぎ、デジカメwatch聯載分…今回は平成卅年、平成卅一年/令和元年にかけて…に、(大幅な)加筆訂正をしてある。叉頁の下段には、作者の短いコメントがあるのも同じ。第四巻以降もおそらく、この流れを汲む方向で進むのだと思ふ。
まあこの先…來年のCP+の話はさて措き、デジタルカメラの六年七年前と云へば、大昔の印象なのだが、"グレイテストの時代"で、私が常用するGRⅢの發表が話の種になつてゐたから、びつくりした。ニコンDfと同じくらゐ…こつちの製造は終つてゐるけれど…の長寿機種なのだな。何となく誇らしく、"我が最高利口者様萬歳"と讚へたくなつてくる。
GRⅢの話ではなかつた。
この巻は前巻から續き、時系列だから、思ひだしつつ讀める。ことに冒頭、おりんさん(当時はオリンパス。OMDSになつた今も、おりんさんはおりんさんなのだらうか)の登場で、ズイコーレンズ、瑞光ときて、東淀川区に繋がつた場面は、聯載時以來、久方ぶりに大笑ひした。地元なんである。
さてこの巻には、長期シリーズの"EOSの目覚め"が全篇、収録され、私を喜ばせた。
作者はミノルタとキヤノンを中心に、オートフォーカスの黎明期史を丹念に調べ、少年漫画のパロディ(見たところ、『HUNTER×HUNTER』と『ジョジョの奇妙な冒険』の成分が濃さうに感じられた)に、うまいこと、落し込んでゐる。デジタル聯載から紙の本への移行に伴つて、作者は余程苦心したらしく、相当の改変が施されてゐる。いちから描きなほすより、大変だつたのではないかと思ふ。
さてそこで、來るべき第四巻への期待を書きつけると、聯載時にも、この巻にも記された"K・時を超えて"を、何としても讀みたい。Kと云へばペンタックス、ペンタックスと云へば私の偏愛するリコーでもある。カメラバカはペンタックスオフィシャルでも、パラレルな展開をしてゐる。そつちも巻き込んで、巨大な"Kの世界"を期待したい。