リコーにGX200といふカメラがあつた。
平成廿年發賣。
スペックその他は下記を見れば判る。
https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/dc/gx/gx200/index.html
GRデジタルⅡの發賣はその前年。平成十七年に初代のGRデジタルが、平成十九年に先代のCaplio GX100(GX200になつて、Caplio銘は廃止されたと記憶してゐる)が出てゐる。この流れを見るとリコーは、単焦点のGRと、ズーム搭載のGXを、平行して造り、併用してもらひたかつたのだなと想像出來る。實際、両機種のインタフェイスは、併用に支障のないくらゐ酷似してゐたから、強ち無理な想像ではあるまい。
GX200は一時期、外附けのEVFがセットになつたやつを使つてゐた。但しGRデジタルⅡとの併用ではなく、買い替へだつた。中々に勝手のよい機種で、EVFを垂直にし、上から覗きこんで撮るのが樂かつた。
さう云へば近年、外附けEVFつて見掛けませんね。必要に応じて使へるのだから、中々有用と思ふのに。かう云ふと、スタイリングが崩れると反論が出さうだが、嘗てニコンが出してゐた、ニコン1 V3を挙げれば、反論になるでせう。あれは別体のグリップとEVFの取り附けを前提に、全体を巧く纏めてゐた。ニコン1に就ての云ひたいことは横に措いて、この實例がある以上、スタイリングがどうかう云ふのはこの、際理由として成り立たない。
身も蓋も無く、EVFを内藏すれば、話は簡単だと云へば、云へなくもない。ソニーのRX100Ⅲで、採用されてゐるし…併しあちらの發賣は平成廿六年。遡つて六年前の機種に、その理窟を押しつけるのは無理がある。それにRX100は受光素子がGX200に較べて大きい分、EVFの内藏にも無理は少かつたと思ふ。技術的な構造的な理窟は兎も角、そもそも我われ男子としては、オプションのパーツをあれこれ、附けたり外したりしたくなるのが、当然の慾求ではないか。
えーと、何の話でしたか。
さう、GX200だつた。やや広角寄りの(所謂)標準ズームを固着したこの機種、正直に云ふと、今でも少し慾しい。實用性を考へれば、全然だめだらうことは勿論、解つてゐる。とは云へ、ごく限られた用途…私の好きな、卓上の飲食(ここの訓みは"オンジキ"でお願ひしたい)を撮るのに使ふなら、現役復帰も無理強ひではなからうと思ふ。
いやまあ、さういふ目的も無いわけではないんだが、實のところは、GRデジタルⅡとGX200の併用は、十年余り前からやつてみたかつたのだと、ここは率直に白状したい。我が冩眞機好きの讀者諸嬢諸氏だつて、あれとこれとの組合せが幾つか(或は幾つも)浮ぶでせう。浮ぶにちがひない…叉も話が逸れさうだ、用心しなくちやあ。
冒頭に挙げたWebサイトで、GX200のシステムチャートを見た。GRデジタルⅡとバッテリ規格が共通なのだな。互換品でもこの際かまはないから、二つくらゐは(GRデジタルⅡの分も含めて)慾しい。ワイド・コンヴァータやテレ・コンヴァータ。それらとフヰルタを附ける為のアダプタ。レンズが出る動作で押しひろげられるキャップ。EVFが欠かせないのは勿論のこと。さて中古品にかういふ全揃へがあつて、幾らくらゐになるか知ら。
まあここまでふるい機種だと、相場なんてありさうで無いのと同じだらうが。
であれば、自分が"適切と思へる値段"が、適正になる。具体的な金額を挙げるのは控へるけれど…と、ここまで書いてから、リコーにはGXRといふ変態度の高い機種(褒め言葉の積りですからね、念の為)があつたのを思ひだした。詳しいことは省くとして、この機種にはGX200相当のレンズユニットが用意されてゐた。序でに初代GRに近しいユニットもあつた筈で、冷静になる…訂正、冷静を気取るなら、こつちの方が(まだ)、望ましくはあるまいか。
さうだらうな、きつとさうだ。
私の中のクールな(多分に怪しいのは認めます)部分は呟くのだが、GX200の元オウナーである私としては、すりやあちよつと、と首を横に振る。振りたくなる。今さら古い機種に手を伸ばさうとする理由は、實用より情緒の範疇だもの、当り前の態度ですよ。といふより、高値廉価云々以前に、ちやんと動く個体が見つかるかが問題である。有り体に云へば骨董品だもの、見つけ次第、(手早く動作を確めて)買ふ…くらゐの積りでないと、入手し損ねるのは間違ひない。
さ。覚悟は出來た。
あとは縁を待たう。