これを書き出したのは卯月の末である。
二日三日前、円谷プロダクションから、ウルトラマンの新作が發表された。そのことに就て書きたくなつた。
『ウルトラマンオメガ』
初回は文月の第一土曜日、午前九時。
メインの監督は武居正能、構成は根元歳三と足木淳一郎が受け持つ。
第一報で明かされたのは、ウルトラマンオメガの姿、主人公を演じる俳優…近藤頌利(男前)の名前。後は物語の大まかな枠組みくらゐで、ざつと云へばそれは
・主人公は"ソラ"から落ちてきた宇宙人。
・記憶を失くしたかれはソラトと呼ばれることになる。
・ソラトが落ちてきた地球に怪獸はゐなかつた。
・ソラトはオメガスラッガーといふアイテムを用ゐて、ウルトラマンオメガに変身する。
・変身を解いたソラトは、猛烈にお腹が空く。
なのださうで、当り前のことだが、何だか漠然としてゐる。これだけでも幾つかは想像出來る。
第一に(少くとも序盤で)防衛隊か、それに類する組織は出ないだらうこと。
第二に、ソラトとかれを受け入れた地球人との関係が、大きな軸になるだらうこと。
第三に、オメガの出自と怪獸の出現との関連が、もうひとつの軸になるだらうこと。
第四に、その姿とスラッガーといふ単語から、『ウルトラセブン』を意識してゐる可能性かあること。
更に云へば、"変身を解い"た後、空腹になるといふから、ソラトの姿がおそらく、本体なのだらう。記憶にある限り、ウルトラシリーズで、主人公の食事に焦点を当てた例は無かつたから…『ウルトラマンメビウス』で、GUYSの食堂が描かれた回はあつたけれど、食事が主題ではなかつた…、フェイドアウトしてほしくない設定に思ふ。
一方で話がどう始り、どのように展がり、そして纏つてゆくのかは、丸で想像がつかない。武居が前回、メイン監督を務めた『ウルトラマンデッカー』では、主人公たちと対立する立ち位置の、バズド星人アガムスといふ、キャラクタを出したけれど、同じ路線を撰ぶとは思へない。かと云つて、ウルトラマン"オメガ"に対して、"アルファ"が登場しても、不思議には思はない。
そもそも、"怪獸がゐなかつた地球"に、どんな理窟で怪獸を出さうといふのだらう。素直に考へれば、"ソラ"から落ちてきた宇宙人(併し偶然なのだらうか)が銃爪になるか、大きな関連を持つのだらう。だとしたらソラトが、地球星人からどうかうされる展開も…いや、武居の作風なら、厳しい試練はあるにせよ、苦い後味にはきつとなるまい。これは推測でも予想でもなく、私の希望になるのだけれど。
最後にもうひとつ、気になつたことを書いて、この稿を終らせたい。何かと云へば、"ソラ"の表記がそれで、"空"でなく、"宇宙"や"天空"へのルビでもなく、カタカナのソラ。
字面で撰んだのか知ら。
それともカタカナのソラ表記に意味があるのか知ら。
或はSORAが何かのアナグラムなのか知ら。
ダブルミーニングの可能性だつて考へられる。
まあ私程度の頭に浮ぶことである、経験豊かな武居や根元や足木が、検討しなかつたとは思へない。それにこれから少しづつ明かされる情報を元に、あれこれ想像を巡らせ、裏切られるところまで…寧ろそんな手があつたのか、と驚かせてほしい…が、"ウルトラの樂み"なのは、念を押すまでもないでせう。夏のソラから、かれがやつてくるまで、その時間は未だたつぷり残つてゐる。