令和四年卯月廿九日。
スターダム、ハイスピード選手権。
王者 AZM対挑戰者 駿河メイ。
何がどうしてなのか、理由を具体的に云ふのは六つかしいんだが、定期的に観返したくなる試合が私には幾つかある。この一戰を久し振りに観て、その感を新たにした。
プロレス、プロレスラーの"速さ"には、色々な種類…ちがひがあると思ふ。これも叉、どこがどうと、具体的には云ひにくい。併しAZMと駿河メイの"速さ"は、明かに質が異つてゐて、時にずれ、時に嚙みあふのが、實に面白かつた。
仕掛けるメイ
切り返すAZM
基本的な構図はごく簡単なのだが、メイの仕掛けが實にヴァラエティ豊かで感心した。AZMの髪をロープに擦りつけるコミカルな動きを見せたかと思へば、リングサイドに立つたAZMの足をラリアットで刈つた後、トップロープ越しにフットスタンプを喰らはせ、更に不完全ながら、あずみ寿司を逆に掛けもして、まつたく大した才能である。
併しメイの様々な仕掛けに対応しきつたAZMも叉、素晴しかつた。彼女の"巧いのは間違ひないけれど、飛び抜けた一点が見当らない"…惡い言葉を使へば、"テクニカルで小器用な"プロレスラーだつた印象が、すつかり変つたと云つてもいい。まあAZMのキャリアを考へれば、対応出來ない方が寧ろ不思議で、ここらは私の目が節穴だつた。
さうだそれから、バーブレフェリーが、このタイトルマッチをうまく裁いたことも、特筆しておかう。ここでレフェリーに触れたのは、プロレスはプロレスラーだけでなく、レフェリーも試合を作るひとりだからで、スターダムはそこを判つてゐるのだな。
試合は最後、AZMがメイに、あずみ寿司を仕掛け、それを返されたところに、あずみ寿司のお代りを決め、三カウントを穫つた。鮮やかな結末。
舞華や朱里、中野たむ、鈴季すずたちが見せる、重く厳しく烈しい試合もいいけれど、速さそして技巧を堪能するのも叉、スターダム…訂正、プロレスの樂みだと云つていい。尤もかういつた試合は、さほどに多くない。何の弾みか、不意に二人の戰ひを観たくなる瞬間があるのは、その辺りに理由があるのか知ら。