何年ももう、ハンバーガーを食べてゐない。
何年前だつたか、福生でアメリカン・スタイルのハンバーガーを口にしたのが、最後だと思ふ。大量のフレンチフライが添へられ、ハートランドを一本奢り、当時のレートで十七ドル強(この稿を書いてゐる時点のレートなら、十三ドル足らず)だつた。あれは旨かつたな。ヨコタ・ベイスメントの近くにあるバーガーショップだつたから、その雰囲気にあてられたのだらうか。
眞つ当なバーガーショップの、眞つ当なハンバーガーが旨いのは併し、確かである。眞つ当とは、註文を受けてから肉を焼き、麵麭を温め、バーガーに仕立てることを指してゐて、詰り調理に時間が掛かる。マクドナルドやドムドムバーガーやファーストキッチンやバーガーキングやフレッシュネスバーガーやモスバーガーを惡く云ふ積りはないけれど、残念ながらあつちは、おやつの域を出てゐないと思ふ。
いや、おやつならおやつでいいんです。
いいとしても、おやつにしては割高に過ぎる、とは云ひたくなる。今の平均的な値段はよく知らないが、ちらちら目に入つた限り、立ち喰ひ蕎麦屋の、かけ蕎麦とミニカレーのセットを、平らげられるくらゐらしい。だつたら立ち喰ひ蕎麦屋に足を運ぶ方がいい。小父さん嗜好なのは、認めるのに吝かではありません。
それでも偶に…稀に、ハンバーガーを食べたいと感じることがある。それもフッサ・シティのメリケンスタイル・バーガーより、チェーンのファスト・アンド・ジャンクなやつ。何の弾みでさうなるのか、自分でもよく判らない。踏みとどまれるのは、その金額なら、気に入つたお惣菜屋の、ハンバーグ辨當(コロッケも附いてゐる)の方が、好もしいなあと思ふからで、バーガーチェーンには、この点に就て一考を求めたい。
前段で何の弾みかと書いたが、實はひとつ、思ひあたる節がある。スポーツの中継がそれで、たとへば野球見物に、ハンバーガーは似合ふ。そこはホットドッグだよと思ふひともゐるだらうが、ホットドッグには、卅年ちかく前、メジャーリーグ見物の時に、ケチャップを忘れられた厭な記憶がある。茹でたソーセイジと刻んだオニオンの、まつたく味つけがないホットドッグほど、不味いパン料理はないからね。サンフランシスコのボールパークで食べるホットドッグには、用心し玉へ。
さてでは、何故スポーツ見物にハンバーガーが似合ふのか。試合…ゲームを観るんだもの、手元に集中しなくてもいい、もつと云ふなら手摑み出來る食べものが、好もしいに決つてゐる。…と考へた時、ファストでジャンクなハンバーガーとフライドポテト、コーラかアイスコーヒー…いやバドワイザーのやうに壜のまま呑める麦酒(コロナもうまいんだが、残念ながら、ライムを搾る面倒がある)との組合せは、非常に有力な候補とも云へるのではなからうか。
裏を返すと私にとつてのハンバーガーは、慾するタイミングといふか條件といふかが、かなり限定された食べものといふことになる。更に云ふと私は自宅で、テレビジョンを観られない。受信機を持つてゐないからで、さうなると、スポーツ見物のお供にハンバーガーを樂むには、現場でなければ、テレビジョンの受信機を置いてある場所まで行かねばならない。宿を取つて呑むのには、何の躊躇も無いが、ハンバーガーの為となつたら、すりやあちと、違ふですかねえと云ひたくなる。フッサのバーガーショップが、スポーツバーのやうなスタイルになれば、問題は(一応)解決しさうだが、十七ドル乃至十三ドルに見物料と追加の麦酒代が掛かると思つたら、これも何だか釈然としなくなる。私がハンバーガーから、何年も遠去かつてゐる理由は、もしかするとこの辺にあるのかも知れず、だとすればまつたく面倒な話であり、態度だと思はれてならない。