閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1326 ヴァラエティ豊かな

 マヨネィーズから派生したソースと云へば、タルタルソースを先頭に挙げて、異論が出る心配はあるまい。

 

 色々に使へる。

 チキン南蛮。

 海老フライ。

 鯵フライ。

 牡蠣フライ(私はウスターソースに、微量のチリーソースを隠したのを好むけれど、そこはまあ)

 茹で、蒸し、叉は炒めた諸々の野菜。

 コーンドビーフやポーク・ランチョンミート。

 固めに仕立てたオムレツ(乃至玉子焼き)

 何だつたら、ざつと焼いた食パンやバゲットに塗り、叉は乗せるだけでもいい。

 刻んだ玉葱に胡瓜。

 細かく潰したうで玉子。

 ツナ罐や鯖のフレーク。

 或はハムの類。

 ちよいと捻らうと思ふなら、ごく細かく切つたたくわんか、矢張り細かく刻んだ辣韮、柴漬け、高菜漬けを加へるのもうまい。

 

 具をたつぷり入れ、パセリでも振りかければ、ソースでありつつ、なかば獨立した食べものへと、のし上りさうな気までしてくる。

 

 タルタルソースの發祥は、例によつて曖昧である。十九世紀フランスの料理の本に載つてゐるさうだから、マヨネィーズの完成から、その頃にかけて、工夫されてきたのだらう。そもそもはタルタルステイクに合せる為、生れたともいふが、確めてゐないから、本当のところは判らない。

 仮にタルタルソースが、ステイク…肉料理用のソースが原型としたら、冒頭に挙げた幾つかの料理の中で、チキン南蛮を最初にした理由…気分にも納得がゆく。チキン料理なら、唐揚げや竜田揚げ、ソテー、蒸し鶏、どうかすると、親子丼にも似合ふと思ふ。出汁を控へ目に、ゆるいオムレツのやうにして、やはらかく仕上げたタルタルソースをかけるのだ。

 

 それで“鶏料理+種々のタルタルソース”を専らにする呑み屋…お店があれば、受けるんではないかと思つた。何しろマヨネィーズは、懐が深い。様々の味を受け容れる。醤油や味噌は勿論、大蒜、生姜、韮や葱、すり胡麻や煎り胡麻、ケチャップやウスターソース、チリーソース、中華料理にある各種の醤…基のマヨネィーズから調整してゆけば、ヴァラエティ豊かなメニュになりさうな気がするのだけれど、商ひにならないか知ら。