閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1365 小さな失敗

 熱いつゆで啜るうでた素麺を私は、にうめん…“にゅうめん”でなければ、“煮麺”でもなく…と思つてゐる。このつゆは、大坂風の饂飩で用ゐるくらゐの、あはいのが好もしい。まあ私は極端な無精ものだから、麺つゆの濃さを、調へるに留めてゐるけれども。

 つゆでなく、具無しのお味噌汁に入れるのもいい。ただ一束では多い(半束もあればいい)から、自分では殆ど用意しない。つゆを入れるのに、蕎麦猪口を使ふ手はあるが、どうも気分がちがふ。にうめんは矢張り、大振りの丼に茹であげた素麺を入れ、つゆをたつぷり張つて啜るのが、本道ではなからうか。

 

 すりおろし生姜と小口葱。

 (私の父親はここに、梅干しをひと粒を加へる)

 但しこれだけでは、腹保ちが甚だ宜しくないといふ難点がある。にうめんだからね、そんなものよ。と云はれては元も子もなくて、何とか食事(に近い辺り)まで、出來ないものか。要するに、種もの。

 相手が饂飩や蕎麦だつたら、天麩羅を気張らうかとも思へる。にうめんでは併し、まけてしまふ。一方で多少の油つ気は慾しい。

 それで刻み揚げが浮んできた。今は袋詰めが、賣つてるんですね。面倒なので乱暴と知りつつ、ひと摘みを素麺と一緒に茹でる。それでまあ不味くならない。よく出來てゐるなあ。

 序でに揚げ玉を少し、散らす。こつちも袋詰めが賣つてゐる。マヨネィーズをまぶして、醤油をほんの少し垂らすと、からだに惡い摘みになるのは余談。しつつこくなつたら、味つけぽん酢をちよいと振ればいい。

 卵を切らしてゐたのは、小さな失敗だつた。