閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1412 枝豆問題

 暑い季節が近づくと、枝豆を慾する気持ちが、高まつてくる。JAの解説によると

 

 [大豆が熟す前の未熟果が「エダマメ」です。“畑の肉”といわれるほど高い栄養価が特徴]

 

なのださうで、肉呼ばはりは名誉なのか、どうか。その辺の判断は、枝豆農家の諸嬢諸氏に任せたい。

 同じくJAの解説に目を通すと、こんなことが書いてある。先づ撰び方。

 

 [枝から切り離すと一気に味が落ちるのでなるべく枝つきを購入しましょう。

さやと茎のつなぎ目が茶褐色になっていないもの、豆がふっくらとしているものを選びましょう]

 

 更に保存法として、こんな注意がある。

 

 [枝つき、なしに関わらず、購入後すぐに茹でましょう。すぐに食べない場合は、硬めに茹で、しっかり水分を切ってから冷凍しましょう]

 

 成る程うまい枝豆を食べるには、贖つた“枝つき”を、“すみやかにうでる”のが、大切らしい。尊敬する檀一雄が、筍を存分に味はふには、“掘ツタ、モイダ、喰ツタ”でなくてはと教へてくれたのが、思ひ起される。もつと云へば、呑み屋でさう滅多に、うまい枝豆にありつけない理由は、ここだつたのかとも思はされる。

 

 まあ“枝つきを素早くうで”ることに拘泥しなければ、枝豆を樂むのは、大して六つかしくない。料理と呼べないのは承知しつつ云ふと、大量の大根おろしに、冷凍の枝豆を混ぜ、醤油をひと垂らしするだけで、ごく簡便なお摘みになる。予め醤油や麺つゆに(解凍を兼ね)浸け置いてもいい。胡麻と葱を散したら、料理ではなくても、尤もらしさは醸せる。

 

 ただうまい枝豆は、きつとうでたてで熱くつて、匂ひも歯触りも、間然とするところがない。うすく塩をふるだけで、最高の前菜が出來る。“未熟果”なのに、我われの舌を悦ばせるのは、不思議と云ふべきでせう。

 

 併し前段に戻るとそのうまい枝豆は、さう簡単に出會へない。チェーンの呑み屋では大体、冷藏庫に保存したうで置きを出してくる。うまくない。酒菜が自慢の呑み屋なら、出しはするが、さういふ呑み屋じたい、私の周りには少い。詰り手を拍ちたくなる枝豆を摘める機會には、中々恵まれないわけで、これは大きな問題である。暑い季節が近寄つてゐるのだ。我が呑み屋の親仁さん、頼みますよ。壜麦酒とうでたての枝豆ほど、似合ひの組合せはさうさう、見当らないのだから。