令和八年も半分が終る。
今年が明けてからこつち、あれこれ慌しくつて、我が胸の具合まで、気を配る余裕は殆ど、なかつた。まあ裏を返すなら、それで済む程度に、調子は安定してゐると考へられる。
併し変らぬ問題は烟草である。
まだ詰らん愚痴を云ふのか、と思はれてはこまる。卅年余、喫ひ續けた習慣なのだ。さう簡単に無かつたことに出來るものか。それに尊敬する内田百閒や、丸谷才一も、喫煙者だつた。両先生の愛讀者であり、私淑者でもある私としては、文藝が及ばぬ分、見倣ひたいと思はなくもない。尤も丸谷先生は晩年、禁煙されたさうだが、長寿でありつつの禁煙だつた。例外と云つていい。
さういふ点は、見倣はんで宜しい。咤られるのは間違ひないし、叉それは正しい咤責でもある。第一、仮に喫しでもしたら、小沼先生から、どんな言葉をかけられるか、想像もしたくない。
それでこの懊悩の要点を考へるに、烟ではないか。
そこで(或は止む事を得ず)VAPEに手を出した。
味つけ水分を、水蒸気にして吸ふやつ、使ひ捨てで、ニコチンレスが謳ひ文句。
iQOSにも、似たのがあるけれど、初期投資が必要な上、煙草にも転用出來る。これは好もしくない。好もしくないも何も…と話が進んでは、具合が惡い。兎にも角にも、近所のドラッグストアで、投げ賣りされてゐたのを、ドラッグストア扱ひなら少しはましだらうと、自分に理窟を附けつつ、幾つか贖つてみた。
封を開けて吸ふだけ。
充電も何も要らない。

正直なところまづい。
包装では果物系の味つけと思はれるが、そんな印象はない。投げ賣り価格(三百円くらゐ)でなければ、きつと何かに(たれか、ではなく)八ツ当りせずには、をられなかつたらう。ただ、一口二口、蒸気を入れるだけで済むのは便利である。紙巻烟草の場合、一度火を点けると、五分かそこらはかかつたから、気らくさは勝る。
ここで念を押すと、ニコチンレスを謳つてゐるからと云つて、VAPEの安全性が担保されてゐるのではない。小沼先生に以前、訊いたところ、からだへの影響に就ては、有意のデータが無いし、そんなら禁煙ガムを嚙みなさいと応じられてもゐる。御尤も。お医者さまの立場としたら、当然の言である。
まあここは…と居直るのだが…、烟草よりは多少、ましだらうから、気休め程度にVAPINGをするくらゐは、許してもらへるのではなからうか。いや矢張り、先生には内緒にしなくては、いけないけれども。