ホッピーといふ飲みものがある。
肩書は發泡麦芽醗酵飲料。
但しそのまま、飲みはしない。
呑み助の讀者諸嬢諸氏には御存知のとほり、焼酎を割るのに使ふ。だからそのものの味を、私は知らない。
知る限り、廉な呑み屋の品書きで、馴染み深い。呑み屋の用語だと、ホッピー自体の“外”、焼酎の“中”との組合せで、“ホッピーセット”と呼ぶ。ちよいと凝つた店だと、ホッピーの白と黑(白だけなのが多い)、焼酎の銘柄(たとへばキンミヤ)で、味に変化をつけられる。
まあ率直に、品のよろしくない飲みもの…呑み方なのは、確かである。そのくせ、呑みくちは惡くなく、馴れるまでは、へんに醉ふことが少からずあつた。
ひとつ、忘れてゐた。ホッピー(セット)は、“中”のお代りが原則。私の場合、おほむね“外”一本に対し、“中”が三杯で丁度よい。それを麦酒と同じやうな早さで呑めば、廻りも早くなる。それが当然と判つたのは、何度かへんに醉つた後である。

廉なお摘みで呑むのがいい。
もつ煮に枝豆、ポテトサラド。
更に焼き鳥のたれやハムカツ。
まあそんなあたり。ホッピー(セット)に際立つのは(たれが何を云つても)、お摘みを欠かせないことで、酎ハイも(居酒屋式)ハイボールも、この点は及ばない。
詰り相応に腹が減つて、なほ(廉に)呑まうとする夜、ホッピーセットを撰ぶのはまつたく、適切な判断と呼べるのではないかと、私は思つてゐる。


