閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

448 特権マウント

公式にはElectro Optical Systemの頭文字でEOSだと記憶してゐる。初代機のEOS650は昭和六十二年發賣。旧國鐵が分割され、アンディ・ウォーホルが亡くなり、利根川進博士がノーベル賞を受賞した年でもある。 わたしが最初に買つたのは初代から三年後に發賣さ…

447 たかがと云ふなかれ

東都人がミンチカツをメンチカツと呼ぶのには未だ馴れないくせに、茹で玉子だとうで玉子…厳密には聲に出すなら"ゆで"で、文字の時は"うで"…と云ひたくなる。何故と訊かれても、好みに属する部分なので、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏にはご容赦願ひます。 一体わ…

446 崩す

この手帖で使ふ画像は殆ど呑み喰ひの際に撮つてある。それについて過日、某氏から 「段々と藝の域に近づいてゐるのではないかね」 と云はれた。お世辞の成分が濃ささうだし、或はふと思つた程度ではないかとも(何しろ具体的な指摘が無かつたから)考へられるが…

445 清楚でも清潔でもない

割烹は割クと烹ルの意。割くのは魚や獸の肉でせうな。どちらも高級な調理法と云つていい。ことに烹るのは高級と同時に贅沢でもあつた筈だ。一定の火力を長時間保たねばならない。またその火力で使へる器を手に入れるのは、かなりの難儀だつたにちがひない。…

444 厄介な紅いあいつ

わたしの経験なんぞ大した事ではないから、そこは差引きの必要がある。東都で滅多に見掛けない食べもののひとつに紅生姜の天麩羅を挙げて、異論や疑念は出るだらうか。薄切りの紅生姜を使ふ。辛みがあつて酸つぱくて、おかずにも饂飩の種にもなる。大坂では…

443 オスカー小父さんの誤算

135判のフォーマットでは50ミリの焦点距離を標準レンズと呼ぶ。ではその標準レンズとは何ぞやと、(辞書的な)定義を知りたくなるのは人情であらう。結論を先に云ふと、明確な定義は無い。"何に対しての標準"なのかが曖昧なのだから当り前である。身も蓋もなく…

442 温故知新の山葵考

山葵が日本原産の植物なのは知つてゐた。併し ・學名:Eutrema japonicum ・シノニム:Wasabia japonica とは知らなかつた。どちらにもjaponの語が含まれるのが象徴的ですな。學名とシノニムの細かなちがひまでは触れない。元は藥(草)として用ゐられたらしい…

441 忠實蒲鉾

たまに蒲鉾を食べたいと思ふ。併し毎日食べたいとは思はない。蒲鉾はさういふ食べものである。幾つかの辞書から解説を引きつつ、取り纏める。 ◾️大きく云ふと 白身の魚を擂り身にし、調味料や片栗粉等を加へて練り、それを板につけ、或は簀巻にし、(時には)…

440 丼王

小學生の頃、國語の授業で 「遠くの大きな氷の上を多くの狼十づつ通る」 といふ一文を教はつた。妙な文であつて、何かと云へばこれは"遠く"、"大きな"、"氷"、"多く"、"狼"、"十"、"通る"の仮名が、現代仮名遣ひではすべて"お"になるといふ意味がある。教科書…

439 西から東の佃

ごはんとお供で作る輪つかと肴の輪つかは、多くの部分が重なる。どちらもお米出身だから、似合ひも近しくなるのだらうか。鯖の味噌煮、若芽と胡瓜と蛸の酢のもの、豆腐と油揚げのお味噌汁にごはんが適ふのは当然だが、お茶碗が徳利或は銚釐に代つてゐても不…

438 八杯

先日何の弾みだつたものか、八杯豆腐といふ名前が目に入つた。豆腐料理なのは当然判つたし、見覚えのある字面でもあつたが、どんな食べものなのかが浮んでこず、取敢ず検索をしてみたら、直ぐに大体のところが判つた。かういふ時に便利ですな、インターネッ…

437 蕎麦を掻く

蕎麦掻きといふ食べものがある。取り急いでWikipediaを見ると 蕎麦粉を熱湯でこねて餅状にした食べ物。 蕎麦粉を使った初期の料理であり、蕎麦切りが広がっている現在でも、蕎麦屋で酒のつまみとするなど広く食されている。「かいもち」ともいう。 と書いて…

436 伝統重んずべし

いきなり、引用。 なほ行き行きて、武藏野の國と下つ総の國との中に、いと大きなる河あり。それをすみだ河といふ。その河のほとりにむれゐて思ひやれば、限りなく遠くも来にけるかなとわびあへるに、渡守、はや舟に乗れ、日も暮れぬ、といふに、乗りてわたら…