閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

477 煮玉子を追加して

普段は進んでラーメンを食べには行かない。そんなら蕎麦や饂飩の方がいいと思ふ。ラーメンがきらひなのではなくもつと単純にどうでも宜しい。併し繰返すときらひではないから偶には食べたくもなる。普段ではないのだから矛盾してゐることにはならない。それ…

476 汁で呑む

お酒…この稿では日本酒に限ることにするが、そのお酒を呑む時には食べものが慾しくなる。さうでもないよと云ふひともゐるだらう。友人の頴娃君はそつちに属してゐて、腰を据ゑて呑みだすと何も食べなくなる。平気なのかなあと不安になるが、その不安は措いて…

475 隧道

吉田健一に『旅』と題された短い随筆がある。要するに旅行に出たいと書いてあつて、末尾に"旅行がしたい"とあるのだもの、わたしの要約は間違ひでも乱暴でもない。かういふ一文は非常に迷惑で、こちらも旅行に出たくなる。出無精な身なのに。 そこで甲府に行…

474 定食、また

前々回、気に入りの定食屋で久しぶりに食べたことを書いた續きである。何故かと云ふと中華風肉豆腐定食をやつつけながら目にした"日替り"定食の献立に、鶏とピーマンの甘味噌炒めとあるのに気附いたからで (こいつを食べない法はないといふものだ) と思つた…

473 活用

今どきの若ものには想像が六づかしいと思ふが、昔…四十年近く前、世間の片隅にエロ映画館といふのがあつた。エロチックな場面のある映画の意味でなく、文字通りのエロ映画で、ポルノ映画、ピンク映画とも呼ばれてゐた。にっかつロマンポルノと云へば、聞いた…

472 定食

家の近所に小さな飯屋がある。晝間は定食、夜はちよつとした呑み屋。まあよくある営業形態だと思ふ。それが諸々の事情で晝のお弁当と夜の持帰りになつて、夜はもとから足を運ぶ機会が少かつた(小さなお店だから禁煙なのである)から我慢出來るとして、晝の定…

471 シグマについて

最初に買つたカメラはキヤノンのEOS1000QDで、EF35-80ミリレンズが附いてゐた。その後にシグマの70-210ミリを手に入れた。シグマを撰んだのはEFレンズより廉価だつたからで、70-210ミリにしたのは第一に素人が陥る"望遠レンズ"指向にわたしも陥つたからで、…

470 本の話~がんらい何をしてもいい

『居候匆々』 内田百閒/福武文庫 がんらい何をやつてもいいのが小説で、併しさう云ひだすと何だか落ち着かない。とは云へ何とか定義附けを試みたところで、例外は幾らでも出てくるだらうし、その内定義そのものより例外の方が多くもなりかねず、千年も経てば…

469 ライカM4-2のこと

昭和五十一年にライカ社からM4-2といふ機種が發表された。昭和五十三年から五十五年にかけて、一万六千百台が造られた。ざつと確かめた限り、Mバヨネット・マウントのライカでは最も製造期間が短く、また台数の少い機種である。 この時期のライカは会社とし…