閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

094 入り口

経験則だからあてにはならないと思ふが、初見の呑み屋のつまみが信用出來さうかどうかは、つき出しで半分くらゐは判る気がする。この場合、チェーン店は勿論省いてある。あすこは(多少の例外は認めるとしても)そこそこ廉価に、そこそこの呑み喰ひをする場所…

093 正義のベーコン

ベーコンは正しい。 これは世界に数少ない眞實のひとつである。 ベーコンの正しさは何か。 旨いことである。 それだつたら、豚の生姜焼きでも東坡肉でもハモン・セラーノでもソーセイジでも、旨いんだから、世界の眞實だらうと異論が出るかも知れないが、わ…

092 一部始終(贅言)

贅言といふのは余談とか余話とか、そんな程度の意味合ひで、『濹東綺譚』で初めて目にした気がする。併し荷風をまともに讀んだのは『断腸亭日乗』くらゐの筈だから、何か怪しい。別の本で触れてゐたのが、記憶に残つてゐるだけかも知れない。余談や余話の意…

091 一部始終

週末の某日、呑みに出掛ける機会に恵まれた。西武新宿線の都立家政驛近くにあるKといふ居酒屋で、年に二、三べん足を運ぶ。これと云つた銘酒があるわけではないが、つまみが旨くて、女将さんの客あしらひも宜しい。詰り佳い居酒屋。 Kに行く時は必ず、呑み…

090 本の話~あの門の向ふ側

『ドバラダ門』 山下洋輔/新潮文庫 小説…なのだらうと思ふ。筒井康隆は解説でこの本を、山下洋輔の“唯一の長篇小説”と記してゐるから、この稿でも小説としておきたい。 自信はないけれども。 併し小説が本來、型を持たない文學の形式だとすれば、こんなに小…

089 走るひと

毎朝の通勤は同じ経路をほぼ同じ時間帯に動くもので、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏でもそれは変らないと思ふ。さうなると見掛けるひとの姿もさうさう変らず、その中には必ず走るひとがゐる。昔利用してゐた地下鐵の某驛で、胸を揺らしながら走るひとがゐた。今…

088 伝統に忠實な

お米といふのは一種の完全食なので、おかずが貧相でも、ちやんと炊きあげてゐれば、それで一回の食事が成り立つ。成り立つて仕舞ふ。小麦や馬鈴薯や玉蜀黍では残念ながら、かうはいかないだらう。勿論これは優劣の話ではなく、主食の性質のちがひ。…とは云へ…

087 烏賊だけに

ニューナンブの頴娃君と飯を喰ふとなつたら、大体は蕎麦屋に落ち着く。ハンバーガーやカレーライスやラーメンを積極的に撰ぶことはなくて、まあ小父さんふたりには、蕎麦屋が似合ひの場所だらうと思へる。それで呑む。ここで呑むのは勿論お酒。玉子焼きや板…

086 回鍋肉

この“回”の字は“戻す”の意味らしい。ざつと訳すと、“鍋戻しの肉”くらゐになるか。ところがキッコーマンのサイトを見ると https://www.kikkoman.co.jp/homecook/search/recipe/00004350/index.html 戻すのは野菜になつてゐる。序でにキューピーにも頼つてみる…

085 ベースボールとんかつ

空腹で席につく。 暫し待つて、目の前に登場するのはとんかつである。勿論、千切りのキヤベツ、香の物、お味噌汁にごはんもあるし、とんかつが揚げたてなのは云ふまでもない。 さて。 ここで。 とんかつに何をかけるか。 何もかけないといふ撰択は今回、無い…

084 カップ麺を論ず

ラーメン。 饂飩。 蕎麦。 焼そば。 春雨。 世話になつてゐるのは、まあこんなところだと思ふ。好物かと訊かれたら、正直なところ、首を傾げるけれど、便利かと訊かれたら、それは認めるのに吝かではない。獨居の半老人としては、乾麺と併せて、台所の隅に常…

083 ラヂオの話

テレビジョンを持つてゐない。地上波がデジタル放送に移行した前後、壊れて仕舞つた。それで手元にあつたポケットラヂオに頼つたら、ほぼ不便がないと判つたので、それきりになつてゐる。 小中學生の頃、ラヂオはわたしにとつて、非常に身近なメディアだつた…

082 過剰

①鯖の水煮罐。 どこのでもいいでせうが、あんまり上等のは買はなくていいと思ふ。 ②大豆の水煮。 詳しい事はよく判らない。わたしが買ふのは消費税込み105円。 ③屑野菜。 “野菜炒めセット”や“千切りキヤベツ”でもかまはない。ただ“千切りキヤベツ”だと、見た…

081 マーク・ツー

手持ちのフヰルム式一眼レフはペンタックスのKマウントで、リコーのXR-8(この手帖の10回目で触れましたね)が中心になつてゐる。中心といふことは、中心ではない機種もあるわけで、画像では28ミリ・レンズが目立つてゐるけれど、今回はボディ…矢張りリコーのX…

080 あぢさゐ

我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には既によくご存知だらうが、この手帖では、時事的な話題をほぼ、取上げない。それは方針であるのだが、その方針を採るにしても、採る理由があるもので、今回はさういふ話。 この稿を書いてゐる現在、巷間で八釜しいのはたとへば、…