閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

066 鯵フライ問題(仮)

近所のマーケットで時々、特賣と銘打つて鯵フライが2枚98円(消費税別)で並べられる。普段は矢張り消費税別で128円だから、かういふ機会を逃す手はない。それで買ふ。キヤベツなぞと一緒にお皿に乗せ、さてそこで悩ましくなるのが何を掛けるのが望ましいかい…

065 本の話~番外篇

最初に買つてもらつた小説は『太陽系七つの秘宝』だつた。エドモンド・ハミルトン。野田昌宏…かれが宇宙軍大元帥と知つたのは、随分と後になつてからだつた…の翻訳で、ハヤカワSF文庫版。今は確か創元文庫に収められたと思ふが、挿し絵が水野良太郎でないと…

064 幸せ卵

前回の[063 例外色]に續いて卵が登場する。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏からは、片寄つてゐるよと云はれさうな気もするが、卵はわたしの偏愛する食べものなので、ご容赦願ひます。それに偏愛なのだから、片寄りも仕方がない。 立ち喰ひ蕎麦屋でわたしが好むのは…

063 例外色

[060 不精者の正方形]で、この手帖の画像は ①“本の話”ではカラー。 ②それ以外はモノクローム。 が原則。 と書いた。理由までは繰返さない。何しろ不精者ですからね。 ここで大事なのは“原則”のひと言であつて、原則だから例外も生じる。それが今回。 何故例…

062 漬ける

お漬物が好物なのです。 ごはんとお味噌汁にお漬物があれば、食事は完結するのではないかと半ば本気で云ひたくなるくらゐ。 と云へば我が親愛なる讀者諸嬢諸氏にも成る程ねえと納得してもらへるのではないか知ら。 色々とありますな、お漬物は。 塩漬け。 糠…

061 ぼんやり旅行

不意に鶴岡に行きたいと思つた。 山形県鶴岡市。 何かの縁があるわけではない。 併し理由がないわけでなく、尊敬する丸谷才一先生の故地なのがそれに当る。 小説家兼随筆家兼批評家、時に翻訳家…ジェイムズ・ジョイスと探偵小説と王朝の和歌を愛し、發句をも…

060 不精者の正方形

[閑文字手帖]での画像は ①“本の話”ではカラー。 ②それ以外はモノクローム。 が原則。正方形にトリミングして…その必要がある場合は…使ふ。理由はごく単純に、樂だからのひと言に尽きる。 「それは、をかしい」 と論難するひとが出てきさうな気がする。 「カ…

059 アマウマ

甘酢と旨いはほぼ直線で結びつく。 わたしの場合。 とまあ、ここでは念を押しておきませうか。世の中の味覚は時にこちらの想像を離れるから、甘酢と聞いてびくともしない、奇妙な感覚の持ち主がゐないとも限らないもの。 さう云ひたくなるくらゐ、わたしの舌…

058 公爵ソース

マヨネィーズと“ィ”を入れて表記するのは、『洋食や』(茂出木心護/中公文庫ビブリオ)の眞似事。スプンやホークと書くのも同じで、我ながら節操なしの態度だと思ふ。佛語でmayonnaiseと綴る。羅馬字讀みをすると發音はマヨ(ン)ネイゼに近さうな気もする。それ…

057 こびりつくカメラ

妙な具合に記憶に残るカメラといふのがある。わたしだけの話ではなく、数奇者なら大体はそんなものではなからうか。その1台乃至それ以上の機種は、数奇者それぞれに異なつてゐるのが当り前で、わたしの場合、それはキヤノンのEOS RTになる。銀塩EOSの古い機…

056 掻き揚げ

ここで云ふ掻き揚げは天麩羅の一種を指す。指すのだがふと気になつて辞書で調べる(以下⚫️印の部分は引用元の仮名遣ひをそのまま用ゐます)と ⚫️ひっかくように上の方へ引きあげること。 とあつた。何となく引つ掛る感じがして、更に“あげる”を確かめると、“上…

055 本の話~黄金を抱いたのはたれだ

『黄金を抱いて翔べ』 髙村薫/新潮文庫 某銀行に保管されてゐる金塊を強奪を目論んだ連中の顛末。それだけの話を娯樂に仕立てられる小説家が他にゐないわけではないけれど、デヴューで然も女流作家に範囲を絞ると、我が國では髙村薫をもつて嚆矢とするのでは…

054 安直豆腐

花が散つて風に緑が含まれる頃になると豆腐を食べたくなつてくる。と書くのは正確さに欠ける。豆腐は年中いつ食べても旨いもの。眞夏でも玄冬でも不意打ち気味に恋しくなる。中でも安直なのが冷奴なのは強調するまでもないでせう。八釜しいことを云はなけれ…