閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

046 食べにゆく

たとへば一泊の旅行に出るとしませう。二泊でも三泊でも、或は一箇月でも、その辺はお財布が許す限り、好きに日程は組めばいいが、兎に角旅行に出るとする。その時に何を目的とするか、といふのは意外に難問ではないかと思はれる。 「それは矢つ張り、旅先で…

045 時々だもの

時々思ひ出して、慾しくなつて、直きに忘れるカメラといふのが何台かある。直きに忘れるのだから必要なのでなく(もしさうだつたら忘れられないし、買ひもするでせう)、単に物慾の対象に過ぎない。ただかういふのはお財布の中身とその場の品揃への具合でどう…

044 惡癖なのだから

“蕎麦屋で呑む”のは一種の惡癖でわたしはこの惡癖をニューナンブの頴娃君から教はつた。一合のお酒に板わさか玉子焼きか鴨焼きをあはせる。お酒を註文したら、ちよつとしたつき出し(揚げた蕎麦とか味噌とか)が用意されるから、肴はこれくらゐで足りる。その…

043 麦酒と一緒

尊敬する内田百閒は麦酒が大好きなひとであつた。一ぺんに半打の壜(大壜として三リットルくらゐか)を空にして、その間用足しに立たないのが自慢だつたさうで、我慢強い膀胱だつたのだな、きつと。わたしも麦酒は好きだが、ジョッキに二杯もあれば十分だし、…