閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

500 イホ

歴史的仮名遣ひの表記である。發音は"io"、漢字で書くと五百。音は五(i)/百(o)に分解出來る。五百羅漢なんて云ひますな。この場合、はつきりした数といふより、漠然とした大きな数字と考へるのが正しい。 ある俳人が自撰の句集に『五百句』と附けておいて、…

499 好きな唄の話~Out of Blue

我われのご先祖はエロチックな話題が好きだつたし巧くもあつた。前者は今でも同じとして、後者はさて、どうだらうか。卑語を使はずにさういふ話をする為、ご先祖は和歌狂歌や發句川柳を活用した。詰り何かにかこつける思はせぶり…暗喩の技法である。といふこ…

498 好きな唄の話~元祿名槍譜 俵星玄蕃

日本人はどうして忠臣藏を甚だしく好むのだらう。その疑問に、丸谷才一は"御霊信仰"と"カーニヴァル"といふ一見よく判らない組合せで、併し鮮やかな解を示した。詳しいところは『忠臣藏とは何か』をご一讀あれ。納得するかどうかは別として、何故を突き詰め…

497 好きな唄の話~韃靼人の踊り

モンゴル帝國がロシヤの広範囲を支配に置いたざつと二世紀半を、ロシヤでは"タタールの軛"と呼ぶ。司馬遼太郎の云ふ遊牧帝國の群れが、暴風雨のやうにユーラシアを駆け抜けた時代と云つてもいい。軛と呼ぶ以上、ロシヤ人にとつて、誇らしい歴史ではない。但…

496 好きな唄の話~天国列車で行こう

永井豪といふ漫画家がゐる。元天才。かう書くと激怒するひとも出るだらうが、天才にすらなれない漫画家が殆どの世界で、天才であつた事實は凄いことなのだと云つておく。序でに讀むなら、『デビルマン』(但しオリジナル版)は勿論、『手天童子』にも目を通し…

495 好きな唄の話~夜歩く

筋肉少女帯のアルバムで一ばん完成してゐるのは『サーカス団、パノラマ島へ帰る』ではないかと思ふ。ことに冒頭、[ビッキー・ホリデイの唄]から[詩人オウムの世界]は大槻ケンヂの猟奇好み、乱歩趣味がちやんと唄物語になつてゐる。今確かめたら發賣は平成二…

494 好きな唄の話~ガラスの天球儀

涙の雨が降る天球儀の中を、走れ君のレイン・コート、さう呼び掛けるのである。 (これはもう、ジュブナイルではないか) ジュブナイルとは何ぞやと訊かれたら応じるのは六づかしいが、少年の冒険小説…いや冒険の物語と(ここでは)(一応)云つておかう。今でもあ…

493 好きな唄の話~Oh!クラウディア

古代のローマ人は個人の名前に無頓着だつた。たとへばセクストゥスを日本語にすると六郎くらゐの意味。そのくせ渾名は好きで、アフリカヌス(大スキピオ)やフェリックス(スッラ)、マーニュス(ポンペイウス)辺りは有名でせう。外にもファビウス(愚図、鈍間が転…

492 野菜を焼く

串焼きは以前から好物である。 以外と古くない調理法ではないかと思ふ。串はそのまま、肉や魚や貝や野菜を焼くには、火力の適切な調整が必要で、 さういふ設備を調へるのは困難だつたらうといふのが理由のひとつ。串を焼かず、肉や魚貝や野菜に火を通すには…

491 殿上人もご存知ない

麦酒。お酒。葡萄酒。焼酎。泡盛。ヰスキィ。ウォトカ。わたしが主に呑む酒精はおほむねこんなところで、念を押すと葡萄酒にはシェリーやコニャックも含まれるし、焼酎は黒糖米麦芋を纏めてあり、ヰスキィにはアイリッシュもスコッチも入つてゐる。それぞれ…

490 麦酒を下さい

内田百閒は冬の麦酒を好んだといふ。"味が引き締つてうまい"のださうで、そんなものなのかなあと思ふ。[たいめいけん]の初代は常温…温めた麦酒を好んだらしい。温かい麦酒が旨いのかどうか。確かに醸造の中でお湯を通しはするけれども。エセーの中で初代は、…

489 ポテト・サラド呑み屋

廉な呑み屋で外れ(る心配の少)ないつまみと云へば、煮込みとポテト・サラドが双璧である。わたしは大体の場合、どちらかを註文する。両方同時に註文したことはない。煮込みとポテト・サラドを同時に註文すべきではないといふ規則があるわけでなく、自分にさ…