閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

137 さういふ運び

年に何べんかビジネスホテルに泊る。ビジネス詰り仕事でなく、遊びの寝床で使ふので、眞面目なビジネスマンから、冷やかな視線を送られるかも知れない。ここでは一応、済まないねえと云つておく。 そのビジネスホテルの料金には大体、“朝食バイキング”が含ま…

136 独りで

偶に独りで飲みに行く。遠くまで足を運ぶことはしない。旧國鐵で云ふと中央線の大久保から中野の三驛が範囲なので随分と狭い。別に狭くて困りはせず、日常的に動くのがこれくらゐだし、この辺りには呑み屋が多い。恵まれてゐる土地なのだとここでは云つてお…

135 串の気分

以前にも触れた記憶があるが、気にせずに書くと、串ものをわたしは大きに好む。 焼き鳥に焼きとん。 串揚げ。 豆腐や蒟蒻の田樂。 或はここにおでんの飯蛸や牛すぢを入れていいかも知れず、かういふのを大きに好むのは旨いからで、序でに廉だからでもあるが…

134 あれを喰はすな

定食の看板…ことに日替り定食の品書きは時に空腹をひどく刺戟することがある。何がどうと訊かれてもこまつて、空腹とはさういふ状況を意味するのではないだらうか。 本当は家で素麺を茹がかうと思つてゐたのだ。葱と生姜、温泉卵で三束。温泉卵とは妙だなと…

133 無駄または不要乃至贅沢

何年か前、思ひ立つて宇都宮に行つたことがある。餃子を食べたい。餃子と云へば宇都宮。調べてみたら案外と近い。ビジネスホテルにも空きがあつた。なら行かう。といふ流れで、我ながら安直にもほどがある。ホテルは東武宇都宮驛の近くに取つて、旧國鐵宇都…

132 あくがれはさて措いて

立秋を過ぎた辺りの時期から、漠然と來年の手帖をどうするか、考へ出す。今年はパイロットの見開き二週間のやつを仕事の管理用に、私用にはアシュフォードで見開き一週間のリフィルを同社の聖書判システム手帖に使ひ、更にメモ用としてコクヨのA六判リング手…

131 留意点

小學生の土曜日は午前中に授業があつて、帰宅してから吉本新喜劇だつたかルパン三世の再放送だつたかを観ながらお午ごはんを食べた。平日の給食は食パンかコッペパンだつたから、お晝にお米を食べるのは週末に限られてゐて、かう云ふと時代だなあと思ふでせ…

130 とりとめのないカメラなどの話(その5 終)

永井荷風の『断腸亭日乗』に、ローライの寫眞機を買つて、現像と焼付けを試したといふくだりがある。そこで荷風が手に入れたローライは何だつたのか。そこを改めて讀んでも、どの機種を手に入れたのかはまつたく判らない。この当時のローライは、オリジナル…

129 とりとめのないカメラなどの話(その4)

食事の時に食べものや飲みものの寫眞を撮るのが習慣になつたのはデジタルカメラ…正確にはカメラ機能を搭載した携帯電話の常用に伴つてのことで、馴染んだ頃にそれをフードポルノと呼ぶのだといふ批判的な言を耳にした。今でも使はれてゐるのかどうかは知らな…

128 とりとめのないカメラなどの話(その3)

ハッセルブラッドはスウェーデンのカメラで、ツァイスはドイツのレンズで、スウェーデンとドイツが仲良しなのかどうかはよく知らないが、この組合せは凄い。ことに503SWといふボディにビオゴン38ミリレンズの組合せは凄い。ハッセルブラッドはブローニー判の…

127 とりとめのないカメラなどの話(その2)

稀に綺麗だなと思へるカメラがある。恰好いいのとはちがつてゐて、たとへばオリンパスのOM‐1は綺麗だと思ふが、恰好いいとは云ひにくい。その逆がニコンのF3で、何がどうちがふのか。両者を較べると、必要な部品が、必要な場所に、使ひ易く配置されてゐるの…

126 とりとめのないカメラなどの話(その1)

最初からとりとめないと決めてゐて、さうだから頭も尻尾もない。かう云ふと、[閑文字手帖]にこれまでとりとめがあつたのかと冷静に指摘されさうだが、結果的にとりとめなくなつたのと、そこを考へないのはちがふのですよと、ここでは居直つておく。確實なの…

125 ポテトフライの謎の部分

タランティーノの『パルプ・フィクション』の冒頭で、オランダ帰りのキザなヴィンセントが、マヌケ・アフロのジュールスに 「アムステルダムぢやあ、フレンチ・フライに何を添へるか、知つてるか」 と訊く場面がある。ジュールスはアムステルダムでフレンチ…

124 決めかねる

父方の祖母はわたしが生れた時から一緒で、亡くなるまでの間の四半世紀余り、いつもわたしを甘やかした。特別な贅沢をさせたのでなく、いつだつてわたしの味方だつたので、ただの一ぺんも叱られたことがない。父親の話を聞いても、しかられた記憶は一度(それ…

123 外れ(續ビアもつ)

前回、もつ煮(と壜麦酒)は完全食ではないかと勘違ひしたことに少し触れた。その時には頭の働くひとに、その辺りを考へてもらひたいと書いたけれど、もしかすると勘違ひではないかも知れないと思へてきた。なので自分で書くことにした。 さてここで我われは先…

122 ビアもつ

暑い時期は食慾がすつかり落ちる。さうでもないよと云ふひともゐるだらうね、凄いなあ。まあそれでも、食が細くなるのは、かまはない。例年の如くである。ただ自分でもまづいと思ふのは、それでも何かしらは食べなくてはならず、その用意をするのが面倒にな…

121 populaireニッコール

前々回の[119 木星の復活]で、キヤノンPといふカメラについて触れた。触れると気になるのはわたしの惡癖で、だから今回はキヤノンPの話をするのだが、そのPはpopulaireの頭文字だといふ。カタカナ表記だとポピュレールか。佛語である。國産カメラで佛語由來…

120 カレー饂飩はプロレスである

プロレスはややこしい。格闘技と断定出來ないのは今さら云ふまでもないのだが、ではエンタテインメントなのかとも云ひにくく、どちらの要素も濃厚ではあつても、どちらかを撰択するわけにはゆかず、その混在が、混在こそがプロレスなのだと考へるのが、どう…