閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

999 埒もなく

書き出した時点で、[閑文字手帖]のページ・ヴューが、一万にひとり、足りないところまで到つてゐる。この稿が千にひとつ及ばないのと、歩調が合つてゐる風に見えたのだが、これはただの偶然である。 それは兎も角。 過日の晩、鶏皮(揚げ)のぽん酢和へ…鶏皮ぽ…

998 梯

年の瀬、西上前には、東都の気に入りの呑み屋を巡ることにしてゐる。巡るといつたつて、強靭ではない体だから、三軒…頑張つても四軒が精一杯である。併し気に入りの呑み屋は、三軒四軒では収まらず、そしてお酒は、頑張つて呑むものではない。となつたら 「西…

997 銅壷で煮られる時間

おでんの種を撰びなさいと云はれたら、次の順に挙げる。前半の四天王に、後半の四種を加へて八強。 玉子 大根 厚揚げ 牛すぢ 平天 飯蛸 焼き豆腐 お餅の巾着 こんな風に書いたら、竹輪麸を忘れてはいかんとか、結び蒟蒻が判らないとは素人めとか、平天ではな…

996 ふはふは、更に

しつつこく西上の、主に経路に就て迷ひ續けてゐる。ふはふはした感覚を樂んでゐる、と云ひかへてもいい。 最も時間が掛かるのは、新宿から小田急小田原線の急行に乗り、新松田で途中下車して、中沢酒造の[松みどり]を買つてから、小田原に行く。東横インへの…

995 洋食(屋)に就て

何日か前、買つたお弁当…どこだつたか、洋食屋監修を謳つた、ハンバーグとクリーム・コロッケ…の画像を見て、さう云へば(私の知る範囲の)大坂に、洋食屋は少いなあと思つた。東都には[たいめいけん]だの、[ヨシカミ]だの、[ぺいざん]だのと、好きな洋食屋が…

994 〆そば〆うどん

近年はすつかり躰が弱くなつたから、御無沙汰なんだけれど、ある時期まで、呑んだ後にそばを啜る習慣があつた。夜遅く…夜中に開いてゐるのは、チェーン店の立ち喰ひ蕎麦屋くらゐで、必然的にそこに入つた。 「呑んだ後なら、ラーメンだらう」 さう考へるひとは…

993 GRⅢを、西へ

もうこれは、外題のとほりである。 西上にあたつては、GRⅢを、持つてゆく。 一台きりの予定。 廿八ミリだけで大丈夫かと心配する向きには、感謝を示しつつも、クロップすれば、卅五ミリ五十ミリ相当も使へるから、平気なのですと応じておく。 問題は、本体の…

992 センチメンタル石油ストーブ

子供の頃の記憶だから、四十年余り前になる。大坂の家では、寒くなると、石油ストーブを使つてゐた。燐寸で火を点け、火力はダイヤルで調整するやつ。 屋根(天板と呼ぶのが正しいのか知ら)に水を満たした藥罐を乗せ、夜になつたらそこに一合徳利を入れ、お燗…

991 ふはふは、續き

西上に就て、未だふはふはしてゐる。ふはふはさしてゐると云ふ方が正確かも知れない。切符を贖へば、そこから先、新大阪驛までの予定は、自動的に決まる。迷ひに迷つた挙げ句、結論に到らなければ、指定席の取れるのぞみ號に乗ればよく、眞剣さに欠けたふは…

990 薩摩揚げと序でと

魚肉を叩いて練つて油で揚げたら、薩摩揚げが出來上る。揚げたてがいいのは勿論、冷めたのを焙りなほしてもよい。生姜醤油を忘れぬこと。長葱や大根と焚くのも宜しく、饂飩の種にしてもうまい。さう云へば九州で天麩羅饂飩を註文すると、薩摩揚げが乗せられ…

989 ぐつぐつ

令和五年の霜月上旬は妙に生暖かくて、一ぺんに寒くなるよりはましとして、どうとなく落ち着かなくもある。何故かと考へるに、鍋ものが恋しくならない。水炊きに寄せ鍋に、おでんや鋤焼き…この両者を鍋ものと呼べるのかといふ点には、議論の余地がある…、湯…

988 ふはふは

霜月になり、そろそろと西上に就て、考へ出した。例年なら、"ぷらっとこだま"を買つて、"居酒屋 こだま號"を運行させるけれど、調べたところ、その"ぷらっとこだま"が、インターネット上の販賣、且つ支払ひがクレジットカードのみとなつてゐたから驚いた。私…

987 某夜某所の某ラウンジで

某夜某所の某ラウンジで。 焼いたチーズで蓋をした器の中身は、ミートソースのスパゲッティだつた、うまかつた。 かういつたお摘みを、いきなり出してくるんだから、油断も隙もあつたものぢやあない。

986 玉子をおとしたの

蕎麦に生卵を乗せたのを、月見と呼ぶ…のは正しくない。尊敬する吉田健一は、列車旅の途中驛で、立ち食ひ蕎麦を啜るのを、樂みのひとつにしてゐたらしいが、かれはそれを 「かけに生玉子を落としたの」 と書いてゐる。あの批評家兼随筆家は、食べものに厳格なひ…

985 平日休みの或る午后に

少し前、多摩方面に行く所用があつた。所用と云つても、仕事がどうかうではなかつた。だからお酒を買つた。その中のひとつが、下の画像である。 石川酒造は[多満自慢]のカップ。 なんだカップ酒かと笑つてはいけません。しやんとした酒藏が醸るカップ酒なら…