閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

1055 気取るのも甚だしい

何の本で目にしたか、日本の料理の供し方は、西洋料理と較べて、器の撰び方が特徴的とあつた。うろ覚えで書くと、西洋人はお皿に珈琲のカップ、ナイフやホークに到るまで、統一的に用意する一方、日本だと複数の焼きもの、漆器を用ゐるさうで、妥当かどうか…

1054 怪しいなあ

何の記事で目にしたのか、あやふやな記憶で云ふのだけれど、巷では"オールド・コンデジがブーム"なのださうな。冩りすぎる現代のカメラに較べ、不完全な感じになるのが人気なのだといふ。怪しい。旧式のコンパクト・デジタルカメラなんて、使へるメディアが…

1053 これはこれで

東都で啜る麺と云へば矢張り蕎麦なんだが、近畿人であるところの私であるから、時に饂飩が恋しくなる。青葱をたつぷり散らし、温泉卵と揚げ玉に、とろろ昆布のひと刷毛があれば幸せといふものだ。他に油揚げがいいのは勿論、海老の天麩羅もよく、甘辛く炊い…

1052 不意の天玉

某日、夜。不意に某所の天玉蕎麦を思ひだした。さうしたら、舌と胃袋がその気分になつた。この手の食慾は、まつたくたちが惡い。 翌日、晝。天玉蕎麦が、頭のどこかに残つてゐた。これは足を運ばざあなるまい。空模様も丁度よろしく、ふらりと歩くことにした…

1051 二世紀半後の贅沢

本棚に"コシナ社がフォクトレンダーの銘を甦らせた頃"、出版されたムックが埋もれてゐた。長く見ない知人の顔を見た気分になつて頁を捲ると、最初のフォクトレンダー社の創業が(光學機器と精密機械の製造所だつたらしい)が、千七百五十六年と書いてあつたか…

1050 黑喰ひ

この稿では"シホコブ"と訓んでもらひたい。 ざつと調べた範囲で云ふと、明治の初期に原型が出來たらしい。内國勧業博覧會に出品したさうだから、注目に値する技術と考へられたのか。昆布を煮詰める技術じたい、もつと以前に確立されてゐたことを思へば、明治…

1049 視点

随分と以前、どこの公園だつたかで、盆栽の展示を見たことがある。手間暇の掛かる趣味らしい。出來の良し惡しはさて措いても、丹念に育てただらう松の枝振りに感心した。同行の友人は、人工的に過ぎるねえと、審美的な視点で批判して、正しい一面を衝いてゐ…

1048 方向ちがひ

スマートフォン…au版のAQUOS SHV45を相も変らず使つて、呑み喰ひを記録してゐる。ごく一部はこの手帖や、インスタグラムにアップロードをしてもゐる。我が数少い讀者諸嬢諸氏の何人かは、見たことがあるかも知れない。 大体の場合、そのままは使はない。程度…

1047 曖昧映画館~昭和残侠伝

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 東映のやくざ映画には 堅気を大切にする侠客が、 惡辣因業な輩の卑劣な嫌がらせに我慢を重ね、 最後には堪忍袋の緒が切れる。 といふ定型がある。積つた鬱憤を晴らす一点で、勧善懲惡の水戸黄門や遠山の金さんと同…

1046 明日の葉つぱ

最初に焼酎ハイを註文した。そしたら、けふは鯵一尾を丸ごと、天麩羅にしたのがありますと云はれた。摘まない手はない。すりやあ、いただきませうさ。別席で麦酒を呑んでゐた、派手やかな顔立ちのお姐さんが 「すごい美味しかつたです」 と教へてくれた。食べ…

1045 噂と期待

近年どうも慾しいカメラやレンズが無くなつてきた。手持ちのGRⅢがあれば、大体は何とかなりさうで、枯れてきたと笑はれても、止む事を得ない。併し例外がひとつあつて、令和六年夏の發賣を目指してゐるらしい、ペンタックスのフヰルムカメラがそれに当り…ま…

1044 本の話~二冊目のカルテ

『カメラバカにつける薬2』 飯田ともき/インプレス 二年前の[本の話]で取りあげた漫画の第二巻…正確には二冊目のカルテである。 續篇ではない。どうも作者は二巻が出ると思つてゐなかつた(第一巻に"1"が入つてゐないのは、さういふ理由)らしいけれど、私は二…

1043 なんばん

陋屋の近所に定食屋があつて、"チキン南蛮"と大書した看板を出してゐる。我が賢明なる讀者諸嬢諸氏には御存知のとほり、南蛮は元々 「自國を貴く…中原の華とし、周辺の民族を蔑んだ」 呼び方だつた。他に東夷、北狄、西戎があり、南蛮も含め、どれもまあ、酷い…

1042 訓戒

呑みすぎは、いけません。 何の本だつたか忘れたけれど、某政治家が同じ道に入つた伜に垂れた訓戒を讀んだことがある。覚えてゐるのは 「幾つかのパーティに招ばれたら、最初の會場で前菜、次にメインディッシュ、最後にデザートの順で食べ、満腹になるまで、…

1041 眞つ当でない

ペンタックス銘のレンズ交換式カメラは、K-01とQ系を除くと、すべて一眼レフである。但し前者は一眼レフからミラーボックスを外しただけといふ、強烈に変態な(褒め言葉)仕様であつて、あの會社は何を考へてゐたのだらう。 「だつてKバヨネット・マウントこそ…