閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

813 スタミナ

肌寒い休日の晝、久しぶりにちやんとした空腹を感じたので、めしを喰ひに行つた。近所のお店なのは勿論である。外の看板には、"今週のおすすめ定食"と"今月のおすすめ麺"が書いてある。おすすめ定食が"豚ロース唐揚げ ネギソース"、おすすめ麺は"特製スタミ…

812 雨の予感

雨が降りさうな朝、くらい窓の外。 不意に夜は、蛸で呑まうと考へる。 半夏生は疾うに、過ぎてしまつた。

811 白子角右衛門

生没年不詳。 江戸末期の秋田の武士。 と書いて、ここから拡げられるだらうかと思つた。 三秒考へて、諦めた。 東北の日本海側は未だ訪れたことがなく、文字としての知識も、殆ど持合せてゐない。鰰やお漬物を肴に晝間つから呑むため、足を運びたいものだと…

810 逸れに逸れる

鶏肉の甘辛味噌炒め定食といふ品書きを目にして、旨さうだと思ひ、且つ麦酒を呑みたいと思はないのは、ひととして如何な態度だらう。勿論おれは如何なものかと思はれる態度は取らない。詰りお店に入り、席に着いて 「鶏肉の定食をお願ひします。それから、麦…

809 渾沌

沖縄ことばでは"まぜこぜ"を"ちやんぷるー"と云ふ。苦瓜や島豆腐のちやんぷるー…この場合だと混ぜ炒めとか、そんな意味合ひか…は旨いねえ。オリオン・ビールや残波でやつつけたくなる。尤も耻づかしながら、その語源は知らない。元から"ちやんぷるー"といふ…

808 ふつん

家に籠る生活は中々に面倒で、いや面倒とは正確さを欠く云ひ方かも知れず、徒歩五分で行ける範囲で、罐麦酒と煙草を買ふだけなのは、喜ばしくないなあと思つてゐる。別に好きで籠る生活になつたのではなく、さうしろと云はれたからさうなつたので、理不尽と…

807 本の話~星々の王國へ

『スター・キング』 エドモンド・ハミルトン(著)/井上一夫(訳)/創元推理文庫 復員兵のジョン・ゴードンは、ニュー・ヨークの保険會社に勤めてゐる。勇敢なパイロットだつたかれは、ある夜、眠りにつきかけた時、自分の名を呼ぶ聲を聞く。 ザース・アーン。中…

806 漫画の切れ端~ライム博士の12ヶ月

記憶に残る旧い漫画の話。 正直に云ふと、記憶には殆ど残つてゐない。 宇宙人の船から落つこちた(らしい)ロボットが、ライム博士の庭に転がり…いや墜落したところから、話は始まる。 始まるといつたつて、劇的なことは起らない。最後まで名前のはつきりしな…

805 好きな唄の話~Zean Zean

昭和の終り…千九百八十年代の後半、ほんの一瞬、併し強烈な輝きを見せた…PINKはさういふバンドだつた。 わたしと近い年代の小父さん小母さんはきつと、ソニーが提供した『Music TV』の洗礼を受けた筈で、そのオープニングに採用されたのが、この唄…正確には…

804 曖昧映画館~エイリアン2

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 原題は確か『ALIENS』だつたと思ふ。複数形の"S"がポイントで、英語圏の人びとはこの一文字で 「今回はあのエイリアンが二体以上、出るのだな」 と解つたのだらう。日本で『エイリアンズ』のタイトルだつたら、へん…

803 まぶされた分

某日。 お晝を食べに行つて呑むことが稀にある。わたしが属するニューナンブなら、蕎麦屋で玉子焼きか板わさかを肴にお酒が殆ど。駄目な小父さんの気分に浸れるのがいい。 「いやそれは、気分でなくつて」 實際に駄目なんですよと云はれたら、否定はしない。毎…

802 何年掛り

某日。 仕事が終る時間に、この季節としては珍しく、はつきり空腹を感じ、また食慾もあつたので、一ぱい引つ掛けることにした。お馴染みとは云ひにくいが、まあ顔は覚えてもらつた程度の狭い呑み屋。 先づは麦酒にマカロニ・サラド(黑胡椒が振つてある)、そ…

801 三分の特典

某日。 暑くつて空腹は感じるのに、食慾までには到らないお晝に食べるのは、冷たい麺が有難い。さて画像をご覧ください。品書きには 「特製冷しラーメン」 と書いてあつた。特製を名乗るくらゐだもの、うまいにちがひない。さう思つて註文したんである。先に麦…