閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

119 木星の復活

ジュピター12といふレンズが手元にある。ソ連製の35ミリ/F2.8で、ライカねぢマウント。シリアル番号が77で始まるから、多分1977年製造なのだらう。キヤノンPにつけてゐて、併し使へない。キヤノンPの巻き上げが滑るからである。詰りカメラとして使へない。外…

118 おろす

さてここで問題をひとつ。 天麩羅。 鶏の唐揚げ。 蕎麦。 焼き魚。 厚焼き玉子。 水炊き。 ハンバーグ。 以上に共通するところを挙げよ。 …。 考へましたか。 …。 よ御坐んすか。 よ御坐んすね。 正解は“いづれも大根おろしが似合ふ”である。 疑念や異論、反…

117 呑み助封じ

大抵の定食はごはんに適ふ。野菜炒め、茄子の肉味噌炒め、鶏の唐揚げ、鯵フライ、とんかつ、鯖の味噌煮、回鍋肉や青椒肉絲。定食と云ふくらゐだから当り前だが、今挙げた定食の難点は麦酒にも似合ふことで、さうなるとごはんやお味噌汁を、どう扱ふのかとい…

116 黄金の組合せ

黄金タッグと云つて、ぴんとくるひとは多くないかも知れない。プロレスのタッグ・マッチで使はれるくらゐだらうから。 ジャイアント馬場とアントニオ猪木。 ザ・シークとアブドラ・ザ・ブッチャー。 ブルーザー・ブロディと“スーパーフライ”ジミー・スヌーカ…

115 ひとつの理想

カメラ…フヰルム、デジタルに関はりなく…の理想形は何だらう、と訊いた時、万雷の拍手をもつて受け容れられる結論が出るとは思へない。鳥を撮るひとと花を撮るひとと星を撮るひとで、それが異なるのは当然だから、結論が出ないのもまた当然と云つていい。そ…

114 閑文字流

讀書感想文といふ夏休みの宿題は今でもあるのだらうか。課題図書を讀んで、感想を書きなさいといふやつ。本に親しみ、讀書の習慣を身につけるとか、そんな名目だつた記憶があるが、その名目に讀書感想文ほど不似合ひな課題もない。小學生中學生程度の作文術…

113 贔屓

初めて使つたスマートフォンはhtcのbutterflyで、型番は忘れたけれど、4年とか5年くらゐ前のモデル。3年ほど使つたが、2年かそこらでバッテリが駄目になつて、今の機種(シャープのAQUOS SHV33)に換へ、butterflyは家で目覚し時計とサイマルラヂオの専用機に…

112 用件

何用あつて月世界へ。 月は眺めるものである。 と嘯いたのは山本夏彦だつたと思ふ。斬れ味のすすどさは類を見ないけれど、そのすすどさはアナクロニスムを突き詰めた結果だから、そこに目を瞑ると惡醉ひして仕舞ふ。それで溺死まで進めれば李白のやうだと呼…

111 めくもの

時々思ひたつて立ち呑み屋といふ場所に行く。大久保のPとか、中野のP(頭文字は同じだが無関係)やA(ここは葡萄酒専門とヰスキィ専門の二店がある。別名で麦酒のお店もあり)、或はK(焼酎の前割り…二、三日前から甕で水割りにしておいたやつで、所謂水割り…

110 波頭

最近は控へ気味になつてゐるが、獨りで呑むことがある。外での話。外で獨りで呑むなんて勿体無いだけだらうと思ふひとがゐるかも知れず、さういふひとはそもそも呑むことに縁が遠い。何の準備も要らないし、片づけをしなくてもいいのは助かるし、それで旨い…

109 取敢ず乗せてみる

今の丼めしの原型は鰻の蒲焼きに辿り着けるさうで、正確に云へば、蒲焼きを持ち帰る時の工夫だつたといふ。即ちお重に熱くしたおからを詰めたのを用意し、そこに蒲焼きを埋めさした。この場合、おからは保温剤の役割を果した筈だが、そこには蒲焼きのたれが…

108 最小構成

パーソナル・コンピュータで“最小構成”といふのがありますな。CPUとメモリとドライヴ容量なんかの組合せ。大体の場合、どこかしら物足りなさがあつて、あれこれ撰ぶうちにいつの間にか、高額になつて仕舞ふ、困つた仕様のこと。併し最小構成であつても使へな…

107 推測玉子

玉子丼はうまい。 甘辛く、やはらかく、あんなに丼めしに適ふ種もないんではなからうか。 下品かなと思へる程度に濃いめのお出汁で、刻んだ油揚げ、蒲鉾、青葱に玉葱を焚いて、溶き卵でとぢる。それを素早く丼めしに盛つたら、仕上げに三ツ葉を散らす。要は…

106 天竺ふらり

確か葡萄牙語源の記憶がある。 天麩羅の話。 tempêroと綴るのではなかつたか。 外にも諸説があつて、冗談混りを含めて十以上は数へれらるから、端的に云つて、正確なところは判らないが、この稿では一般的と思はれる、葡萄牙説を採ることにする。 ではそのte…

105 調ひラーメン

普段はラーメンを食べない。偶に即席のやつを口にするくらゐで、併しきらひといふわけではないが、ラーメンなら饂飩や蕎麦の方がいい。十数年前は、たとへば呑んだ後にラーメンを啜り込むのが半ば当り前だつたのを思ひ出すと、詰りおれもさういふ年齢になつ…

104 打掛け

家の近所に小さな中華料理風のお店がある。十人余りしか入れない小ささなので、名前は出さない。お午時に定食。夕方からは呑み屋と食事処を兼ねた感じの営業で中々うまい。お午の定食は日替りではなく三日替り。月曜日から水曜日、木曜日から土曜日で品書き…

103 ひよいざる

暑い季節にはざる蕎麦である。と、わたしは必ずしも思つてゐるわけではない。冬のざる蕎麦だつて惡くはないもの。うまい麺ものは春夏秋冬うまいもので、ただざる蕎麦が旨く感じられるのは確かに夏かも知れない。ここで我われは、もり蕎麦といふ呼び名を思ひ…

102 チーズプラス

最近、チーズが便利だと気がついた。先に云ふが、詳しいわけではない…といふより、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏のたれかにご教授願ひたいくらゐだから、さういふ博識な、衒學趣味の、チーズ語りにはならない。今さら念を押す必要があるとも思へないけれど。その…

101 ぶたとん

ごはんがある。 お漬物がある。 あと一品、汁ものが慾しいとなつた時、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏は何を撰ぶだらうか。当り前に考へるとお味噌汁になりさうだが、ごはんとお漬物にお味噌汁だと、焼き鮭とか鯵の開きとか玉子焼きとか、さういつたのが慾しくな…

100 自分の話

気がつけばこの[閑文字手帖]も百回目に到つた。ざつと十ヶ月。我ながらよくはふり出さずに續いたものだと思ふ。それでふと気がついたのは、このウェブログで、自分の話をしてゐなかつた。いや正確に云へばこれまでの九十九回はすべて、自分の話ではあるのだ…

099 好きなお酒の話

ここで云ふお酒は酒類全般を指す。大体のところは呑む。麦酒。日本酒。葡萄酒。焼酎。泡盛。ヰスキィ。カクテル。ウォトカ。紹興酒。ややこしい拘りがあるわけでなく、旨ければ文句はない。併し旨いお酒とは何ぞやと訊かれると、甚だあやふやになつて、麦酒…

098 好きな店の話

お店の名前を出すかどうか、ちよつと考へたけれど、色々恩義があるし、迷惑にはならないだらうと思ふので出す。[清瀧]といふ。都内に何軒かお店を出してゐる、俗に云ふチェーン店の居酒屋。かれこれ二十年近く、お世話になつてゐるのではなからうか。最初は…

097 種

天丼は丼界の王者である。 さう断定して、異論反論批判が出る可能性は、ごく低いのではないかと思ふ。匹敵するのはかつ丼くらゐで、かう書くと、もしかすると我が親愛なる讀者諸嬢諸氏からは、鰻丼の立場はどうなるのだと疑義が呈されるかも知れない。そのご…

096 八王子ダブル・ビフォア

前回は八王子で五拾三次を観た後に、思はぬお店を見つけて歓んだ話を書いたのだが、寧ろこれはおまけであつたと、白状しなくてはならない。主な目的はその前日であつて、どこの何が目的だつたかと云ふと、奥多摩にある小澤酒造がそれ。正確にはその小澤酒造…

095 八王子ダブル

八王子でWといふ暖簾を見つけたから、ちよつと驚いた。関内に同じ暖簾があつて、二年ほど前に何べんか訪れたことがある。関内のWは女将さんの愛想がよく、客あしらひも上々だつたから、今も好感を持つてゐて、併しあつちには中々足を運ぶ機会がない。まあ八…