閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

488 胡椒を削つて

先日、近所の定食屋で"鶏肉と茸の黑胡椒炒め定食"といふのを食べた。實に判り易い名附けだから、その辺の説明は省略して、鶏肉よりその脂を吸つた茸の方がぐつと旨かつたことは特筆しておく。 ところで普段なら品書きに"胡椒"とあつたら敬シテ遠ザクのが習性…

487 本の話~予告篇

過日、やうやく『梟の城』(司馬遼太郎/新潮文庫)を讀み了へた。耻づかしながら初讀である。 久しぶりに、本当に久しぶりに、小説を讀む昂奮を存分に味はへた。 率直に云つて手放しの賞讚は出來ないけれども、それはそれである。なので"本の話"で取り上げたい…

486 カーテン・コール

独りで呑みに行くのに躊躇ひを感じない。小さなお店の暖簾(があれば)をひよいとあけて 「よ御坐んすか」 さう聲を掛けて、どうぞと云はれたら、隅の方に坐る。乃至立つ。それでたとへば金魚を下さいなど註文をすればよい。金魚は大葉と唐辛子をあしらつた焼酎…

485 うつかり(續々)

併しレンズは肴にするより使ふのが本來である。お酒を四杯呑んでなほ余裕があつたわたしは撮れるものなら何枚か撮る積りになつて、ふらりと歩いた。夕方の残照が間もなく夜にならうとする時間帯は、ひとの動きの緊張がほぐれてゆく時間帯、盛り場が目を覚ま…

484 うつかり(續)

前回の[うつかり]で、パナソニック製レンズを入手したと書いた。時系列で云ふと今回はその直ぐ後になる。一体わたしはカメラに関はる何かしらを買ふのに慎重で、ひとつには慌てて手に入れなくても、平気ぢやあないかと考へるからなのだが、それ以上に購つた…

483 うつかり

結論を先に云ふと、パナソニック製のG14ミリ/F2.5レンズを買つたのが、うつかりである。衝動買ひではない。以前からあればよからうと思つてゐて、この手帖でもなんどか触れた記憶がある。Ⅰ型と呼ばれる旧式の方。Ⅱ型は外観がちがふだけで、中身は同じださう…

482 アンテナのあつち側

夕焼けのアンテナのあつち側では "帰ってきたウルトラマン"が 怪獸と闘つてゐる 今

481 ふはふは

前回の[マイコン]で中古でhpのパーソナル・コンピュータを買つたと書いた。買つて使ひ始めて、思つてゐたより常用してゐるau版のAQUOS sense3で、十分ではないにしても、どうにかなるものだと気が附いたから少々戸惑ひを感じてゐる。今のところ、外附けのハ…

480 マイコン

中學生の頃はマイコンと呼んでいた記憶がある。或日父親が突然買つた。日本電気のPC8800系統だつたと思ふ。曖昧な記憶だが、BASICで記録媒体はカセット・テイプを使つてゐた筈だ。その何年か後に自分でも買つた。EPSONが出してゐたNEC互換機。MS-DOSの3.0だ…

479 無精式の豆腐

蒸し暑くなると食慾が減退するのは毎年のことで、それを何で實感するかと云へば、お米を炊く機会がぐつと減る。 (まあ今日は麺麭でエエか) 麺麭が豆腐になることも素麺になることもあつて、詰りさういふ気分を感じると、(わたしにとつて)一ばん厭な季節が始…

478 本の話~番外篇

手元に『アメリカ素描』といふ本がある。新潮文庫。著者は司馬遼太郎。奥附を見ると平成元年四月廿五日に第一刷。同十年九月晦日に廿三刷となつてゐる。単行本は昭和六十一年に讀賣新聞社から發行された。定価は消費税別で六百九十二円。尤もわたしは古本で…