閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

183 パンツを洗ふ

神無月は毎日、更新をする。さういふ方針を作つて、さうしてみた。やつてみると、えらくきつかつた。ざつと見返してみたが、無理やりに書いた感が可成りされる。当り前である。そんなに毎日、書くことがあるものか。義務を負ふわけでなく、報酬をもらへるわ…

182 尤もな嘆き

クリスティの『オリエント急行殺人事件』を初めて讀んだのは小學生の時である。母親の本棚から創元推理文庫版を取り出した。翻訳の健筆をたれがふるつたかは記憶にない。大佐や伯爵夫人、富豪に秘書と今にして思へば、まことにクリスティ的な登場人物が、ま…

181 仙女の爪

背中が痒くなると孫の手を使ふ。新大久保辺に用件があつた時、偶々見つけた百円ショップで見つけたやつである。百円ショップと云つたつて、消費税は別枠だから、勿論その分も綺麗に支払つた。店を出てから、看板は百円ショップ(消費税別)とすべきではないか…

180 気取りと居直り

ウェブログのサーヴィスといふか、機能と呼べばいいのか、その辺はよく分かりません。カテゴリとかタグとかの話。わたしはまつたく使つてゐません。先々をどうするかは見当がつかないとして、さういふ機能乃至サーヴィスが有用になるとしても、おそらく五百……

179 きつと宿つてゐる

沖縄そばにはお世話になつた。干支ひと廻り余り前に2ヶ月か3ヶ月、沖縄市に潜り込んでゐて、その時に何杯も啜つた。饂飩も蕎麦も食べなかつた。ラーメンはやむ事を得ず何べんか食べたが、うまくなかつた。きつと土地柄なのだらう。随分以前に新宿で食べたの…

178 八百円

ある平日の晝、麺麭の一枚を焼くのも面倒に思はれたから、近くの定食屋といふか飲み屋といふのか、兎に角そこに行つた。そこに行かうと思つたのは、定食が旨いからで、これまでは七百五十円だつたのが三十円値上げになつたのは気に入らないけれど、日替り定…

177 疑念

ふつと面倒を感じたある日、マーケットでお弁当を買つた。ロコモコ弁当。 次の日も面倒で、マーケットでお弁当を買つた。茸ソースハンバーグ弁当。 平らげてから、一体おれは、こんなにハンバーグが好きだつたかと思つた。

176 平成最後の甲州路 第5回

3日目が問題なのだと気がついた。今回の日程で云へば11月25日。甲斐國を後にする日なので、予定はその發車時刻を基にしなくてはならない。これを書いてゐる時点での候補は、甲府驛15時55分發のスーパーあずさ22號(新宿驛17時24分着)と同16時10分發かいじ118…

175 燻す

『リングにかけろ』といふ漫画に登場するキャラクターの志那虎一城の綽名が“燻し銀”であつた。それはいい。いいのだが、設定として見れば、志那虎は中學三年生なのだから、“燻し銀”は幾ら何でも無理があるだらうと思へるのをどうにか押し通すのが車田正美流…

174 八王子ダブル・アゲイン

神無月の終りと云へば奥多摩の[小澤酒造]で催される藏開きで、ニューナンブにとつても大事な位置をば占めてゐる。詰りここから新酒の季節といふ認識になるので、たとへば2018年のボジョレー解禁日(11月15日)や、我われが本拠地と定める新宿の某居酒屋で品書…

173 リアルタイムの後のリアルタイム

麦酒を一ぱい。 お酒を常温で二合。 それから玉子焼きに鰯のお刺身、かんぱちの幽庵焼き。 藏開きの話は、後で纏めればいいや。

172 藏開きリアルタイム

茸の天麩羅。 特別純米(酵母が新しくなりました) 藏…は無事に開きました。

171 藏開きリアルタイム

葉は未だ色づかず。 藏もまだ開かない。

170 藏開きリアルタイム

乗り継ぎは青梅で。 藏はまだ開かない。

169 藏開きリアルタイム

腹拵へは立川で。 藏はまだ開かない。

168 平成最後の甲州路 番外篇

甲斐國に行く以上、寫眞は撮りたい。常用するスマートフォンのSHV33も使ふけれど、矢張り寫眞機で撮りたいもので、何故さうなのかと訊かれても返答に窮する。さう思はないひとがゐても不思議ではない。何しろ近年のスマートフォンに搭載されたカメラ機能は侮…

167 劣等感

詩といふものが解らない。これは長年抱く劣等感で、今まで解らなかつたのだから、今後も解る見通しはない。ああいふ言葉の群れは、何かしらを感じとれるひとと、さうでないひとに分別出來て、わたしはきつと後者に属するのだ。残念だけれど、やむ事を得ない…

166 颯風戯よみ~余ること

半世紀 なほも一年 余りけり 目の下の 月も言祝ぐ 余生かな 芽出度さも ほどほどの余生

165 地口

辞書的な意味…定義は以下の通り。 ・しゃれの一種で語呂合せ。 ・世間でよく使われることわざや成句などに発音の似通った語句を当てて作りかえる言語遊戯。 ・諺や俗語などに同音または発音の似た語を当て,意味の違った文句を作るしゃれ。 ・成語に語呂を合…

164 きみ

塩入りの熱湯で烹られ ひび割れを剥ぎ取られ 醤油と出汁に漬けられ 庖丁でふたつに割られ 蕩けさうなその黄身の 小皿に曝け出された時 我が指はふるへる箸先 触れる半身は君の柔肌

163 照合

えいやと店に入り ビールをば一ぱい 取り急ぎ風の前菜もよろし 間を置かず食事に移らむと ひとり品書を注視 たつぷりの炒め物を平らげ 結構な気分でお店を去れり …出來が惡いね。 いや、出てきたひと皿が旨かつたのに、遊びの方が我ながら感心しない。 冗談…

162 帰り道にでも

突然に食べたくなつて、また食べなくては収まりがつかない…つきにくい食べものと云へば、焼き餃子にコロッケ、それから鶏の唐揚げではないかと思ふ。念を押すまでもなく、わたしの場合はさうなので、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏にはもしかすると、鱸の丸揚げだ…

161 赤身礼讚

あな刺身 割かれ盛られし紅の肌 あな刺身 眞白なるつまの控へて あな刺身 緑の山葵をば供にせり 馬手に盃あらば 眼前には友あり あな刺身 汝が脂は珠となりしか あな刺身 紫紺の醤油をまとひて あな刺身 一夜の酒席を彩れる姿

160 夜はまた何ごともなし

夜も更けて かへり路 嬌聲に 惹かれ寄れば グラスには 葡萄酒と 小皿に チーズの欠片 味はひて また食めば 月もまた 中天に醉ふ

159 タツタガハ

古い手帖を捲るのは愉しみであり恥づかしくもあつて、今回は後者の話。 たれの本で讀んだのかは忘れたが、明治頃に短歌を習つてゐた少女がゐて、何かにつけて一首を詠んださうな。先生に褒められて嬉しいとか、美味しいお菓子を食べたとか、見上げた月が綺麗…

158 颯風戯よみ~焼く

持つてこい 熱い老酒 焼き餃子 山門の 厭ふ葷酒の 美味さかな そんならと 拗ねるうなぢの ほつれ髪

157 颯風戯よみ~月見

中秋を 忘れ蕎麦やに 月見かな どんぶりに 月の昇れる 日暮れ前 秋の夜の 月に叢雲 たまご葱

156 颯風戯よみ~ラヂオ

独り寝の 枕頭に鳴る ラヂオかな 夜も更けて 天気予報の 子守唄 流行り唄 昭和が近く なりにけり

155 貧困なのは

朝めしを食べ損ねた時。 移動中の腹の虫抑へ。 或はおやつの代役に。 コンヴィニエンス・ストアのおにぎりをいつ、食べるのだらうと思つたら、これくらゐしか、浮んでこなかつた。 我ながら貧困である。 ところで貧困なのは、わたしの想像力なのだらうか、そ…

154 痕跡

数日前から永井荷風の『断腸亭日乗』を讀んでゐる。岩波文庫に収められてゐる磯田光一による抄録版。何度めになるか、思ひ出せないが、讀む度に面白い。 何がどう面白いのかは、機会を改めて書くとして、今回は別の話。この偏窟な老人の日記…と称する文ノ藝…